娘は秋田市内で知り合った男と恋におちた。
その男は東京から来ていて、娘に東京に来ていっしょに暮らすことを懇願した。
男に会いたい一身で彼女は家出し、東京の男のもとへ向かう。
男の正体はシャブ中のチンピラで、娘の純愛は長く続かず、整形手術を強要され、
ファッションマッサージで働かされるという地獄の運命を辿る。
すこしでも逆らおうものなら、殴る、蹴るの暴行を受け、
公園の階段から突き落とされ、頭を十針縫ったこともあった。 男はエスカレートし、次にソープランドで勤めることを条件に結婚の約束をする。 酷使によりに弱った陰部に傷がついた。 心配そうに産婦人科に連れ添う男はその表情とは裏腹に、病院の電話口で他の女とニヤニヤ話をしている。 それでも娘は男を信じた。男の作った借金を返すためにソープで働いた。 傷はさらに大きくなり、どうしても仕事を続けられないと男に訴えたものの、 俺がどうなってもいいのかとひどく殴りつけたという。 ここではじめて、娘は自分が男から利用されている存在だったことに気づく。 男は、はじめから娘と結婚するつもりなどなく、借金の返済を口実に自分の遊び代を稼がせていたのだ。 それでも娘は彼を愛していた。別れることもできず、東京から逃げ出すこともできず、秋田へ帰ることももちろんできなかった。 ある晩、娘は母親宛に一通の手紙をポストに投函する。東京に来てはじめて親に出す手紙だった。 この手紙こそが、助けを求めたものではなく遺書であったのだ。 その晩、男が眠りについたのを見計らい、男から最初で最後の贈り物、 娘の二十歳の誕生日プレゼントだった黒地で油絵で描かれたような大きな花のワンピースを胸に、 部屋のロフトにコードをかけて首吊り自殺を遂げた。 |
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