明くる日、彼氏に会うと噂どおりの好青年で、とても恨みを買うような人柄ではないことがわかった。
 私は彼氏にさまざまな質問をぶつけた。 前の彼氏のこと、彼女の学業、アルバイト、あの部屋の因果など彼女の生活に関わる事柄を。
 しかし、どれを聞いても自殺に結びつくものはない。 動機は彼の知らないカテゴリーのなかにあるのか。彼女の霊はただの噂話にしかすぎないのか。
 事件究明をあきらめかけ、彼氏に別れを告げようとしたときだった。 沈痛な表情で彼氏が気になることがあると語りはじめた。
「彼女が死ぬ一ヶ月まえくらいに二人で秋田にドライブしました。 彼女は古着が好きで好みの洋服を買っては重ね着などをしてオシャレしてました。
 ちょうど秋田市内を車で走っていると、派手な看板のリサイクルショップを彼女が見つけ、二人で中を覗いたのです。 彼女は普段着用のワンピースを買い、とくにそれを気に入ってそれ以来、僕と会うときもよく着てきました。 ただぼくはなぜかそのワンピースを着ているときの彼女が彼女でないような気がして。 服のせいかもしれないけど、彼女から元気が失われていくような感じなのです」