去る
 では、喜助の呪いにかかった良介の子孫、間田英雄が、喜助の子孫である
本多啓子を殺したとは、どういうことなのだろうか。
 私は考えた。
 代々に渡って間田家を狂わせた因果が巡りめぐって、今度は喜助自身の子孫の命を
奪われた。つまり自業自得に陥ったのかもしれない。
 いや、待てよ。こうは考えられないだろうか。
 喜助の霊が間田家の英雄を狂わせる。そして彼を、自分の子孫である本多啓子の元に
呼び寄せ、彼女を殺させる。
 すなわち、現実社会での重罪を犯させることによって、発狂よりもさらに激しい
復讐を狙った。そのためには、自分の子孫も犠牲にできた・・・。
 祟りとは、際限なく広がり、時に残酷すぎる結果をもたらすのかもしれない。
 私は翌日、岐阜県の高野山別院の高僧と連絡をとり、喜助の霊をとむらう方法を尋ねた。
 彼はとむらいを引き受け、マンションの壁紙の一部をちぎり郵送するよう指示した。
「霊界の深淵を一度覗いてしまうと、何度も覗くはめになるぞ」と言われたが、
喜助の霊を成仏させられるなら、それもしかたない。

 精神薄弱の妹が身ごもっている子どものためにも・・・・。