約三時間後の新宿署。
 取り調べは続いている。徹夜になりそうだが、私はH刑事を待った。
 帰る気も、寝る気もしない。他殺体を見たことはあっても、あれほど無惨なものは
はじめてだった。
 外が明るくなったころ、彼が出てきた。
「ホトケは、マントルの女だったよ・・・」
「遺伝だろうな」
「いったい・・・」
「ホシが誰かを殺そうと街を徘徊しているときに、たまたま公衆電話のピンクチラシを見て、
マントルに行ったんだ。そこで、ホトケの住んでいたマンション名と電話番号を教えられた」
「じゃあ、殺された女は客だと思ってドアを開けて・・・」
「そう、運が悪かった・・いきなりハンマーでガツン!だもんな。殺しの動機は、
妹の精神薄弱を治すためらしい。強いショックを与えれば、治ると信じていたようだ。
目撃者が見た髪の長い女は、ヤツの妹だよ。」
「なんてことだ・・・」
「もっと驚いたのは、母親に『今から人を殺して妹に見せる。そうすれば病気が治る』
と言ってたことだよ」
「母親は止めたのか?」
「いいや」
「ということは、彼女も同じ精神病・・・」
 考えられない顛末に、私は絶句した。
 しかも翌日、H刑事からまたも悲痛な知らせを聞いた。唯一まともだった父親が、
自宅で首を吊って自殺したというのだ。
 私は、この呪われた家族には何かの因果があるのではないかと思った。
 そこで調査を開始した。