しかし、呪われた血により、無惨に殺された女もまた、深い恨みを残し、霊となって
さまよっているのではないだろうか。
 私は青森に発つまえに、殺人事件の現場に向かった。
 ハッカー(カギ開け道具)を使い、部屋の中に入る。
 カーテンを閉めているせいか、真っ暗だ。電気をつけようとスイッチを探したが、
見つからない。ジッポーの火をつける。
 部屋いっぱいに広がるおびただしい血痕の跡はそのままだ。
 スイッチを見つけたが、電気がつかない。ドアの上部のブレーカーに異常はない。
『おかしいな、外にもスイッチがあるのか?』と思いながらドアのノブを回したところ、
びくともしない。と、そのとき、強烈な寒けが背後から襲ってきた。
 振り向こうとしても、体がまったく動かない!
 手も足も顔も、冷気にさらされたように冷えていくが、額から汗が吹き出す。
どういうことだ・・・・。
 突然、「良介・・・・殺す・・・・殺す・・・・」
 低く、しわがれた声が耳もと近くから響いてきた。
 その方向に目を移すと、なんと、殺された女の首がぴったりと私の肩に乗っていた。
トランクの袋から飛び出した、あのむごたらしい顔である。
 あまりの怖さに全身の力が抜けた・・。もう見たくない。目を強くつぶると、青白い光りが
回っているのが瞼に映った。瞼の力が抜けていく・・・・。