さっそく彼女の身辺調査を開始したが、前の彼氏とは約半年前に別れており、
交際中の異性はいない。彼女に片思いをしていた男はいなかったのかと、さまざまな
調査対象を見つけて根気強く調べたが、何も出てきそうになかった。
ほぼ二週間が過ぎ、担当の調査班にも焦りの色が隠せなくなってきた。
やはり内部犯行の疑いが強いとみた私は、S課長の了解を得て、病院内のレイアウトを
つかみ、死体を運び出すのに最適な通用口の張り込みを開始した。
警察が内部調査をしているとはいえ、彼らにとって死体は死体。つまり、ただの窃盗事件
でしかないから、張り込みはしない。そこが盲点といえるだろう。
張り込みから四日目、挙動不審の若い男をゲットした。その男は、医師よりも格下の、
薄っぺらい白衣を着ている。インターン(見習い医師)だ。通用口を横切る際、首を
動かさずに眼球だけ動かして周囲に気を配り、自動販売機でジュースを買う。そのときも、
背後の気配をうかがっているように見えた。怪しい。
病院からの帰り際も、何度もうしろを振り返るなど、怪しい素振りが見えた。
私の調査班は密かに彼を尾行し、自宅をつきとめた。病院からさほど離れていない
こぎれいなコーポ。観察すると、間違いなく独り住まい。
調査班は、コンクリートマイクを使って、部屋の中の生活音を聞いた。すると、
消灯する直前にベットがギシギシと鳴く音がする。しかも、ハァハァと男の喘ぎ声が・・・。
カーテンをしっかりと閉めているため、内部の様子はわからないが、行為が終わっても
男女の会話は聞こえなかった。まるでダッチワイフとSEXしていたかのようだ。
|