まだ私が探偵の駆け出しだったころ、ある男性から素行調査の依頼を受けた。彼は、青年実業家で、ジャガーを乗り回す少々キザなタイプ。相当の女好きに見えた。

 依頼の内容は、ある女性の尾行調査だった。
誰でもいいから自分の切ない胸のうちを聞いてもらいたかったらしく、彼はペラペラとその女性についてしゃべりだした。


 調査ターゲットは、滝口玲奈(二十三歳・仮名)。
 写真で見るかぎり、特Aランク美人だ。知り合ってから、他の女が目に入らなくなるほど、彼女一筋になってしまったと言うのもムリはない。
 しかし、いまだ体の関係はもっておらず、結婚を申し込んだが返事をくれない。ほかにつき合っている男がいるのかもしれないと心配で、夜も眠れないらしい。依頼を受けた私は、その夜、さっそく彼女のマンションに向かった。