私は、現場に向かった。海を見下ろす坂道を下ると、真正面に小さな赤い鳥居が見える。対岸は安芸の宮島である。

青い空に大きな入道雲が白くわき立つ。そこを抜けると、すぐ問題のガードに着いた。今も六年まえのままだ。近所の人に聞くと、つい最近まで血痕が黒く残っていたそうだ。
毎年、命日には花が添えられている。


事故を起こしたAさん一家は新居を手放し、それを賠償金に当ててこの地を離れて行ったらしい。死んだ家族も、死なせた家族も、それぞれに重荷を背負って生きていかなくてはならない。
現場に立った私は、事故直前の光景を想像した。
Dさんが話してくれた花列車のように、二人の女の子は、死の世界に誘うまばゆいものを見たのかもしれない。

そして、何よりもガードに気づくのが遅れた。