学校の怪談話の中で、信憑性があると感じたものの一つに、十五年ほど前に、ある中学校で目撃された少女の霊の話があった。

 彼女は、当時中学一年生のT子さん。性格は明るく、みんなの人気者だったが、突然失踪してしまった。しかしその後も、学校内でT子さんを目撃した人がいる。

 この中学を卒業し、現在、都内の某専門学校で教師を勤めるDさん(二十八歳)は、在学中に彼女を見ている。

 場所は、誰もいない放課後の教室。

 失踪したはずのT子さんが、机に座って何かをしていた。隣のクラスのDさんは、『T子が戻ってきたんだわ』と思い駆け寄った。すると彼女は、髪をハサミで切りながら「洗いたい、洗いたい」とつぶやいたそうだ。

 よく見ると、体が透けている。びっくりして思わず教室を飛び出し、その後、二度と彼女を見ることはなかった。

 また、T子さんより一学年上の先輩も同じような体験をしている。