「社長、逃げてください!」 理由は聞かずにエンジンをかけ、車を発車させた。 ここにいると危ないという本能は私にも働いた。 しばらく走ってから、里見さんに聞いた。 「どうして危なかったの?」 「このまえの何倍も怒っていました‥‥。すごい‥‥。私に取り憑こうとしたから逃げたんです。一度はいられたら、防げない。どんな人でも祓えない霊もいるんです。偉いお坊さんでも‥‥。祟られたら終わり、そうゆう霊です」 「そんなのがいるのか!?」 「お祓いするたびに霊が苦しみ抜いて、だんだん力が強くなるんです。あの霊も、もう何十回と供養され、お祓いも受けている‥‥。それでも成仏しないんです。喉が渇いたとき人間が水を飲むように、霊も人に取り憑いて苦しみを癒すんです」 車が新目白通りにはいり、信号待ちをしているときだった。 <キキーッ、がシャン!!> 体が宙に浮き、荷物が前に吹っ飛ぶ。後ろから来た車に追突されたのだ。 |
|