ターゲット(課長)は江東区の社宅に住んでいて、会社には自家用車で通い、八重洲駐車場をいつも利用していた。
調査は、夕方、彼がその車に乗り込むところからスタートする。
車は赤のカペラだった。課長のくせに、派手な車だな、と思いながら張り込んでいると、彼が現われた。マンガ家の永井豪のような風貌で、とてもそんな悪人には見えない。
カペラが行き着いたのは錦糸町。ここは都内でも有数の飲み屋街だ。
彼は高級クラブにはいった後、自分より背の高い女と喫茶店で待ち合わせて、その女のマンションにはいった。
愛人だ。
ホステスの愛人をもつと、家賃、小遣い、店の飲み代含め平均百万円は必要だから、贈収賄事件を起こすのもいかたない。尾行の成果はあった。だが、肝心の幽霊は見えなかった。私には訴えかけてこないのか。

この報告を秘書にすると、「じつはこの情報をくれたのは課長の奥さんなんだ。彼女が君に相談したいことがあるといっているから、会ってやってくれ」と言われた。