東京駅のそばにある一部上場企業の課長を、社長秘書の密命により調査していたときのことだ。

彼らは下請けの業者からワイロを受け取っており、別の部署に移ってからも「私にはまだ影響力があるんだ。いつも通り金を銀行に振り込め」と脅かし続けていた。彼に渡った業者のワイロ総額は三千万をくだらない。
このことが社長の耳にはいり、いったいなんでそんなに金がいるのかを調査することになった。もちろん、課長には秘密である。
企業からの依頼は調査員に対して本当の依頼内容をふせるのが通常で、このときもただの浮気調査ということだった。
里見さんに加わってもらい、尾行を開始したが、彼女は次の日に突然休んだ。真面目に働き、一度も無断欠勤したことがないので、私は何かあったのかと思い彼女の家に電話を入れた。

すると、その課長にはとんでもない怨霊が憑いていて、とても尾行どころではなく、まともに霊障を受けてしまって今も熱が引かないという。本当に苦しそうだ。
どんな霊が憑いているのか、と尋ねると、むごたらしい死に方をした女の霊だと言う。私は興味をもち、その調査に加わることにした。現場は社員に任せていたので、尾行するのは一年振りである。