●更新日 06/05●
赤ちゃん顔の墓石
日暮里に谷中霊園という広い墓地がある。
桜並木があり春になると桜が満開で大変美しく、かの十五代将軍徳川慶喜もここで眠っている。
この霊園にはいくつか心霊現象に関する噂もある。
桜並木沿いの交番の裏にある公園で、夜、誰もいないのにブランコが勝手に揺れたりするというのだ。
公園は普通の児童公園。夜なので誰もおらず静かだ。
ただ交番の裏ということもあり、あまり恐怖感もなく、霊を呼ぼうとブランコに乗って遊ぶ余裕もあった。
しかし、しばらく公園で遊んでもブランコが勝手に揺れたり、ゴーストレーダー(以後GR)が反応することもなかった。
風のいたずらなのだろう。偶然性が高すぎる。
他にこの谷中霊園には赤ちゃんの顔をしたお墓があり、夜その赤ちゃんが涙を流すという話がある。
そもそも、赤ちゃんの顔をした墓なんてあるのか?
四方を墓に囲まれながら霊園の奥の方へと進む。
当然辺りは誰もおらず静かで、まさに霊界へと入っていくようだ。
そのまま更に奥へ進むとあることに気付いた。
ここはさっき通った場所だ……。
周りが暗い為、迷ってしまったのだろうか?
それとも……。
見渡すと霊園が闇の中まさに迷宮のように広がっている。
とにかく直進することだけを考え夢中で奥へと進んだ。
妙な寒気を感じながら急ぎ足で歩くと周りが微かに明るくなってきた。
そして、そこにそれはあった。
一歳位の赤ちゃんであろうか、暫くこの赤ちゃんを見つめる。
この日は小雨だったので、この赤ちゃんの顔が雨で少し濡れることはあっても、
涙で濡れることはなかった。
不思議なことに、このお墓を前にした途端、先程までの恐怖感がなくなった。
このお墓から感じたのは親の娘への深い愛情、そしてそれ故の深い悲しみ。
GRも反応無し。
その後判明したことだが、この赤ちゃんはホテル・オークラの創始者・大倉喜七郎男爵の幼くして亡くした長女なのだそうだ。
このお墓を見ながら、親子の深い絆は永遠だとあらためて思った。
li.kouji
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