●更新日 07/09●
巨大ボーリング場廃墟に響いた鎮魂歌 後編
口を開いた悪魔にも見えるこの物体。
いや、霊体というべきか。
正体はわからないが、我々はどうやら歓迎されていないらしい。
誰かに追われているような気配を感じながら、我々は3階へと進んだ。
……?
風?
屋内でなぜか風を感じる。
それは隙間風だった。
3階より上では「ホーホー」と鳥の鳴き声が聞こえたり、「ポタっ、ポタっ」と雨漏りの音が聞こえたりと、これまでよりも不気味さが増してくる。
シンドラー社製ではないだろうが、このエレベーターに乗れば生きては帰れまい。
4階に行くとようやくボーリング場だ。
しかしここはあまりに広く全体を念写することは不能。
床だけ写すことに……。
▲天井が落下した跡のようだ。
あたり一面、まるで「焼け野原」。
しかしここまで来ても、最初の目的である「ルンペン」はいない。
あるのはボーリングピンの屍だけだ。
ルンペンは亡くなってしまったのか、それとももう出て行ってしまったのか。
思いをめぐらせながら私の幽体がボーリングピンを拾い上げようとした、そのとき……!
流血!
なんと幽体にも関わらず、下に落ちてる花瓶の破片で指を切ってしまったのだ。
やはり、我々を歓迎していない“誰か”がいる!
我々は急いで周囲の霊を鎮魂させるための儀式を行った。
投げるのはジャミーの幽体。
ボールとピンがぶつかり、カーンという乾いた音が場内に響き渡る。
それはこの巨大ボーリング場が忘れかけていた音、我々からのレクイエムだ。
見事ストライク。
我々を追い回した“何者か”も唸らせたのか、我々の幽体がこれ以上の“霊障”に悩まされることはなかった。
この翌日、周囲を取材したが、「オバケが出るとかいう話はないですよ」と皆口を揃える。
我々が感じたものは、いったい何だったのか!?
これ以上のことは知る由もない。
今はただ、巨大廃墟と化したボーリング場の取り壊しが無事に行われることを祈るだけだ。
サミー&ジャミー
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