タクシー

『乗せたことあるよ、幽霊』

これはタクシー運転手の中田さん（仮名）が体験した話である。

去年の夏の深夜でした、駅前で女性を拾ったんですよ。



「Ａ市まで行って下さい」
「はい」

「今日も暑いですねぇ」
「・・・」

返事がない・・・

何度か話しかけるが、やはり女性は無言のままだ・・・


会話が無いまま目的地に近づく・・・

「お客さん、もうすぐですけど、ここからどう行ったらいいですか？」

「・・・そこを右に行って下さい」
「はい」

「・・・次を左に行って下さい」
「・・・はい」

喋ってくれるようになったのは良かったんですが、
だんだん人気の無い道に入っていったんですよ・・・



こんなところに家なんてあったかなぁ、と思いながら進んで行ったんです・・・

細い路地を５分ほど進むと、車では入れない道になりました・・・行き止まりです。


女性に道を確認しようと振り向いた時には

女性の姿は消えていました・・・

幽霊とか全然信じてなかったんですが、さすがに怖くなってきて
急いで車の向きを変えようとしました。


その時、ヘッドライトが何かを照らしたんです。







首を吊った女性の姿を！


中田さんはパニックになり、すぐにその場を離れたという・・・

人通りの無い場所でひっそりと死んだ彼女が
自分の居場所を知らせる為に街に出てきたのだろうか・・・？



タディ