●更新日 08/02●

海を追われた亡霊は今・・・


その昔、幕張の海には亡霊がいた。



千葉県・幕張に伝わる昔話。
干潟でハゼ漁をしていた漁師が、潮が満ちて陸に戻れなくなると



「こっちへ来い」「こっちは浅いぞ」

と亡霊に呼ばれたものだという。
漁師はその声に惑わされないよう、澪印の棒に体をくくりつけて一晩を明かしたといわれている。


漁業で生業を立てていた幕張の人々は、
災いが降りかからないように海の神様を祀って参拝をしていたのだが・・・。

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現在、
海は埋め立てられ、新都心がそびえ立つこの地に、きれいな砂浜の面影はどこにもなく、漁業に従事する人すらいなくなった。


海の神々への信仰も次第に薄れたのであろうか、
幕張には朽ち果てて放置されているような神社がいくつかある。



そんな神社のひとつが金毘羅宮。

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せまい路地の間に立つ、朽ちた鳥居をくぐり階段を上ると、
まだ昼間だというのに境内は妙に薄暗い。


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境内の草はきれいに刈り揃えられているものの、参拝者が現れる様子は全くない。
宮社はすでに朽ち果てたまま再建もされず、土台だけがかろうじて残っている。

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日が暮れると辺りはもう真っ暗に。
蒸し暑い時期だというのに、なぜか肌寒い・・・。


長い間、漁師たちを災いから守ってきた海の神様は、
住民たちから忘れ去られようとしているこの状態をどう感じているのだろうか。

そして漁村を脅かした亡霊たちは、いったいどこに消えたのだろうか?

まさか砂浜と一緒に埋め立てられたとは考えられまい。
そのまま沖に逃れたのか、もしくは・・・

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深夜0時、幕張の空を彩る光は、
海を追われた亡霊があなたを呼んでいるのかもしれない。



ありひと


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