●更新日 08/31●
赤子の霊
ある悲しい事件をきっかけに起きた話である。
10年程前の話だ。
とある海沿いの町に住む5歳の女の子が、両親と散歩中に、突然
「青白い光がふわふわと、飛んでる。」
と言い出した。
一緒にいた両親には何も見えず、両親は、気のせいだと思い、深くは考えなかったという。
ところが、次の日も、その次の日も、女の子は、同じ場所で、同じ事を言いだした・・・
女の子の指差す方向には、防空壕があった。
不思議に思った父親が、その防空壕の中に入ってみると、
なんと、そこには
生まれて間もない赤ちゃんの亡骸が・・・。
後日、警察の調べで、この赤ちゃんの母親は、隣町に住む30代の女性であることが解った。
置き去りにされた赤ちゃんの霊が、女の子を導いたのだろうか・・・
深夜その場所へ行ってみた。
もともと人があまり来ない場所にある防空壕だけあって、
まわりには何もなく、薄気味悪い空気が漂っている。
暗闇の中、防空壕に近づくと、顔中が蜘蛛の糸だらけになってしまった。
事件以来、誰が置いたか、木が乱雑に積み上げられ、中には入れない。
こんな寂しげな場所に置き去りにされた赤ちゃんのことを考えると、寒気がしてきた。
あまりの、蜘蛛の巣、蚊の多さに、
僕は、体中に絡みつく蜘蛛の糸を払い除け、帰路に着いた。
10年前、赤ちゃんを発見した女の子に話を聞くと、
赤ちゃんの死体発見後、青白い光が見えることはなくなったという。
青白い光の正体は、自分を救って欲しかった赤ちゃんの霊だったのだろうか・・・
島 雷鹿
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