●更新日 01/06●
白い靄の正体は
去年の夏。
私は取材でN県のある町にまで来ていました。
都会と違って町の空気もゴミゴミしておらず、のんびりとした数日を過ごしていて満足。
2日目の夜のこと――
ふと目の前を何かが横切った気がしました。
物凄く小さい何か。
ネズミか何かかなと思ってさほど気にも止めず、そのまま歩こうとしたら
ひたひた
足音が聞こえました。 カツン、カツンという靴の音ではない。
素足で歩かないと出ない、ひたひた という音。
私の直ぐ後ろで音がしていたのが、だんだん離れて行きます。
気味が悪くてさっさと離れ出したい気持ちで一杯でしたが、辺りを見ると少し離れた所に小さい公園がありました。
街灯の光量は少なく、暗闇の中。
確かに、そこにはいました。
ボーっと青白く薄いモヤっとした何かが。
離れられずモヤと公園を漠然と見ていると、ブランコが揺れ始めました。
もちろん、誰も乗っていない。
いえ、乗っている―――
頭では直ぐにここから離れないとと思っているのですが、好奇心がどうしても邪魔をします。
あともう少し近づけば、モヤもはっきりと見える。
一歩。
二歩。
あと少し…
三歩。
四歩。
見えた。
見たと共に見たことを激しく後悔し、口元を押さえながら公園とは逆の方向に走り出しました。
公園のブランコに乗っていたモヤ。
それは、足首
足首だけがブランコの台に乗って、ブランコを“漕いで”いました。
翌日、付近の人に話を聞きに行ってみると、10年以上前にこの公園の前の道路で男の子が車に撥ねられて亡くなったそうです。
相当早いスピードで跳ね飛ばされたせいか、男の子の体は公園横のガードレールに衝突。
足から落ちたそうで、足首が切断されていたそうです・・・
西垣 葵
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