●更新日 03/31●

孔雀王な彼


これは、私の元に寄せられた蔵元さん(22歳・仮名)からの心霊体験です。


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友達に誘われて行った飲み会で、孔雀王という変わったあだ名の男の子を紹介されました。


「何でそんな風に呼ばれてるんですか?」


誰もが聞くであろうというようなつまらない質問をとりあえず挨拶がてらしてみると、彼は少し困ったような感じで微笑んでいました。


そんな彼を押しのけ、周りにいた人達が『よくぞ聞いてくれました!』というような表情でそのあだ名の由来を口々に教えてくれます。

その人達曰く、


「こいつは凄い霊能力の持ち主で、こいつの周りにはとても信じられないような霊現象が次々起こる」
「それだけではなく、その霊現象をこいつは漫画の孔雀王の登場人物のような呪文を唱えたりして自分で解決してしまう」
「こいつの近くに居ると、本物の幽霊を簡単に見る事が出来る」
「とにかくこいつは凄い奴だ」

・・・etc


「はぁ?何言ってんの?」私は心の中で思っていました。私は、心霊現象否定派だからです。

「昔からどこのクラスにも一人はいる、みんなの注目を集めたいが為に霊が見えるとか言っちゃってる霊感少女みたいな感じの奴なのかなぁ?周りも、もう大人の癖につまんない事信じこんじゃってるみたいだけどこいつら大丈夫?変な宗教の勧誘とかじゃないよね?」 

こんな風に思いながらも、さすがにそれを口にすることは出来ません。

辺り障りの無い会話を続けてみるも、やっぱり周りの「彼は凄いんだ」という口調がだんだんイライラしてきます。


「へぇ〜そうなんですか。でも幽霊ってホントにいるんですか?見えるとしたら、どんな感じで見えるの?」

孔雀王くんは、少し困ったような微笑のまま「あの、あそこ…」と居酒屋の座敷の端の方を指差しました。


何だろうと思って指された方を見てみると、人の形をした、黒い煙のような、靄のようなものがユラユラ浮かび上がっていました。


「??? …へ?」
「…あれだよ」

あっけにとられてその人の形をした黒い靄をしばらく見つめていると、それはユラユラ揺れながら、ゆっくりと移動し、私達のいる座敷から出ていきました。


「…もしかしてあれって…」
「…うん、そう…」

そのやり取りを見ていた周りの人達はいきなり笑い出しました。


「前振りなしでいきなり見せてやんなよ」
「びっくりしちゃっておとなしくなっちゃったじゃん」
「ね!言った通りでしょ」


私は声も出ませんでした。

気分悪くなり、飲み会を抜け出しそのまま帰宅したのですが・・・今でも自分の前を歩いて消えていった黒い靄が鮮明に頭から離れません。

心霊現象?馬鹿な。

でも、そうとしか説明が・・・


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信じる信じないは確かに自由ですが、こういうことを出来る人が世の中には少なからずいます。

しかし、大抵は遊び半分で霊の具現化なんてしないものですが・・・。

それを見れた彼女はラッキーだったのか、不幸だったのか。



西垣 葵 西垣葵


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