夢の中の少女と、前世と
皆さんは、前世を信じますか?
信じる人も信じない人も、今回のお話は面白いと思います。これは私の元に寄せられた岡崎さん(27歳・仮名)の体験談。
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俺は恥ずかしながら、27歳になるまで童貞だった。女性と付き合ったことがないわけじゃない。
だけど、何て言うのだろう。いざ、その時となると途端に気持ちが冷めるというか、萎えるというか。
病気だと思って治療を受けてみたが、全くの健康体。ようは、原因不明ってわけだ。
今年になって初詣の時、たまたま占い師が路上で易をやっていた。いつもは素通りだけど、この時は酒の勢いもあったのだろう。
女性運を見て貰ってもいいかな・・・と思い軽く座ったのが、この後に運命と言って差し支えない幕開けだった。
「ほぅ、珍しい。あなたは、運命の女性に縛られているね。それも過去世からの因縁。過去世の時に、この女性以外とは生まれ変わっても契らない。この女性の生まれ変わり以外とは契らないというのが魂の束縛となっているね。あなた、童貞でしょう?」
何をコイツ、失礼なことと世迷言を同時に言い出すのか。しかし、俺が童貞だというのを当てたことに少なからず興味が湧き、聞くのを続けることにした。
「で、いつその運命の女性と逢えるわけ?」
「その女性は、女性としての器が整うまでの間は、魂での感応が出来なかったんだね。もう、今なら解るでしょう。感じてごらんなさい」
「女性としての器?感じる?」
「生理のことだよ。子供を産める体になるってことだよ。感じるのはあなたなら解ることだよ」
間違い無い、こいつは電波だ。
2千円を置くと席を立って、家に帰ることにした。
そしてこの日から、奇妙な夢を見続けることになる。
最初は朧気だった。顔もぼやけて解らない。服も何だか不明瞭だ。いや、映っていて俺が起きると忘れているだけか?
少女がある場所に立っていて、こっちを見ている。何かを呟いているようだ。
3日目、その少女が着ている服を起きても記憶出来るようになった。
5日目、その少女の顔が何となくながらも、起きて忘れないようになった。
ショートカットの黒髪。白のワンピース。背はそんな高い方ではない。
9日目、その少女の顔がはっきりと忘れないようになった。
――当たり前だ、10日も毎晩同じ夢を見ているのだから
11日目、少女の呟きが聞こえるようなった
「ワタシハココニイルヨ」
13日目、風景がしっかりと記憶出来るようになり、彼女のいる場所が駅前だということが解った。
14日目、その駅が“高崎駅”と看板に書いてあり、看板の時計が17:20になっているのが解った。
ネットで「高崎駅」を調べてみたら、群馬県。俺の家は岐阜県。行ったことなど勿論あるわけないのだが、映像を検索して回ったところ、夢で出て来る駅前の風景そのものだった――
もう限界だ。毎晩毎晩同じ夢を見続けるのは。もう限界だ。こんな真綿で首締められるような夢の体験は。
そして、気になる。・・・行ったら、本当にいるのだろうか。
気になった俺は、会社に休みの連絡を入れ、「高崎駅」に向かった・・・!
何の偶然か、夢の17:20に限りなく近い時間に着いた駅前は夢で見た通りの風景。何も変らない。階段を下りて行く。
夢の中で少女はどこに立っていた? 彼女が立っていたのは、あのポールの・・・!
そこには、夢の中の少女が立っていて、こちらを見ている。見ている。見ている。いつから。いつから。
呼吸も出来なくなった―――
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その後、どちらからともなく話掛け、喫茶店で聞いた話に俺はコーヒーを落としそうになった。
何と、少女も年明けからずっと同じ夢を見続けていて、それが余りにも続くものだから確かめるために、今日始めて「高崎駅」に来たのだとか。少女は東京都在住で、高崎駅なんて名前自体初めて知ったとか。
「夢の内容は・・・?」
「最初はぼやけていたのだけど、だんだんだんだん鮮明になって来て、お兄さんが駅の階段を下りてこっちに来るの。日が経つごとに時間とか風景とかが解るようになって、高崎駅というのが今日の朝解ったの。確かめる為に来たら、本当にいたからびっくりして、声も出なくなって・・・」
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その後、岡崎さんは彼女と連絡先を交換し、電話やメールを重ね、2週間に一度は会っているそうです。
例え本当に前世で一緒だったとしても、現世ではどうなるか解らない。信頼関係は最初から築けるものではないわけだから。
岡崎さんの話によると、、、
「前世の記憶なんて全く無い。どこで一緒だったとか解らない。だけど、趣味・嗜好は全て合うし、一緒にいてとても落ち着く。もしかして、本当に運命の女性だと思うように今はなっています」
二人で見た夢は一体何だったのでしょうか?
本当に運命に対しての、魂の束縛? 答えは、岡崎さんと少女だけのモノですが――
西垣 葵
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