約束
一人でマンションの部屋に彼女はいた。
−コンコン−
誰かがドアをノックした。友達と電話中だったし、誰か尋ねてくる予定もなかったので、勧誘か何かと思い無視する事に。
ところが、ドアのノックは止まらない。仕方ないのでドアまで行きのぞき穴から外を見てみると、そこには朝学校近くで見かけた黒いコートを着た男が笑顔で立っていた。
「やぁ、僕だよ。ドアを開けてくれないか?」
コートの男が誰なのかも知らない彼女は、怖くなりすぐに警察に通報。
15分後に警察が来た時には男の姿は見当たらなかったが、念の為にと警官が一晩、マンションの前にパトカーを止めて見張る事になった。
30分程経ち、またドアがノックされた。見張りの警官だろうと思ったけれど、一応のぞき穴を見てみると・・・
黒いコートの男が立っている!
「やだな、僕の事わすれちゃったの?はやくドアを開けてよ。君の綺麗な唇にキスしたいんだ」
窓から外を見るとパトカーはちゃんとマンション前に止まっている。物凄く怖かったけれど、平静を装いドアに向かって彼女は「今、支度中だから、そこを動かないで待っていてね」と言い、男が動かずドアの外で待っているのを確認し、ベッドルームの窓から抜け出し近所の家に助けを求めに走った。
5分経たずに何台ものパトカーが到着し、マンションはパトカーで囲まれた。見張っていた警官は喉を刃物で裂かれ殺されていて、犯人であろう男の姿は何処にも無かった。
マンションに戻るのが怖かった彼女は、友達の家に行く事にした。友達の家につき、ゲストルームのベッドに横になると、すぐに眠りに落ちた。1時間程経った頃、彼女は誰かの視線を感じ目を覚ました。
「何処へ行こうと、誰といようと僕は君を探し出す。僕にはたくさんの仲間もいる。君を探し出す事なんて簡単なんだよ。だってそれが僕達の約束だから」
黒いコートの男が部屋の中央に立ち、落ち着いた口調でそう言った。
彼女が悲鳴を挙げ友達が部屋に来た時には男の姿は消えていた。
「大丈夫?悪い夢でも見たの?」
「ええ、大丈夫。でも、思い出したの。私の望みが思い通りに叶うように13の魂を彼に与えると言う約束を。13の魂を与え、彼にキスしてもらえば、私は誰よりも幸せになれるんだもの。あの女がいなくなって、ハッピーだったからすっかり約束を忘れていたのね」
「何を言っているの?彼?あの女?誰の事なの?」
「ママよ。いつも私の邪魔ばかりするいやな女だったの」
そう言うと彼女は立ち上がり、困惑している友達の首に手をかけ「彼はあなたの魂も欲しいみたいね」と言い、少しずつ手に力を込めていった・・・
これは知り合いの精神病院に送り込まれてきた連続殺人容疑者のストーリー。
ただの妄想なのか、それとも約束した相手が悪かったのか・・・
MAYU
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