冷たいキス
日本を飛び出しアメリカから心霊体験の報告です。
リディアは幽霊(ゴースト)は信じないけれど、死んだ人の魂は意思を持ったスピリット(霊体)として、この世に帰ってこれると信じています。そんな彼女が教えてくれたストーリー。
――― 私はその日、別荘で一人読書をしていた。平日はマンハッタンのオフィスで働いて、週末はリフレッシュの為、夏の間だけ借りている別荘に一人で来たり、友達と来たりするの。
今回は一人出来て読書!と決め込んで、何冊もの本を買い込んだ。丁度良い事に、週末の天気予報は雨。
本を読んでいると、激しい雨が降り出した。古い別荘の為、雨が激しくなると、家中の木がきしむ。ギーギーと言う音は、まるで壊れたバイオリンのよう。(こういう音を人々は幽霊の仕業とか言うんだろうな。)
一緒に連れてきたペットの大型犬はソファーの上でスヤスヤ眠っているから大丈夫。一休みしてまた読書。
20分くらい立った時、雨と風が強くなり、家中がさらに色々なきしむ音で騒がしくなった。
隙間風のせいか、バスルームのドアが「ギギーッ」とゆっくり開いた。ドアを閉めようと動こうとしたその瞬間、タンク(犬の名前)がソファーから飛び降り、低姿勢でドアに向かって唸り始めた。タンクの様子から誰か(幽霊とは思わなかった)がいるのだと思い、急いでタンクのリードを付け、玄関に向かった。隣の家に助けを呼びに行こうと思っていた。玄関のドアを開けようとしたその時「リディア、リディア」と私を呼ぶ声が聞こえた。確かに私の名前が聞こえた。ドアの前で凍りつくように動けなくなった私。突然冷たい何かが私をつかみキスしてきた。冷たい冷たいキスだったけれども、とても長く、力強く、ロマンティックなキス。一体誰にキスされているかもわからないのに気持ちよかった!
キスが終わると、その場にしゃがみ込んでしまった私は、一体誰なのかと顔をあげると。。。3ヶ月前に交通事故で亡くなった彼が立っていた。「シェ、シェーン?」と名前を呼んでみた。彼はにっこりと笑いながら「ハロー、ダーリン」と言った。興奮と驚きが入り交ざり、パニックになりかけてしまったけれど、なんとか「ハ、ハロー」と精一杯言った。現実なのか夢なのか、まったくわからなかった。彼は微笑みながら「僕の事を待っていて、僕も君の事をまっているから。」と言い終わると、玄関の反対にある窓からスーッと消えていった。本当に現実に起こった事なのかは自信がないけど、あの冷たいキスの感覚は今でも残っている。いつかまた彼に出会う時がくるのかもしれない。―――
リディアの彼は本当に来たのでしょうか?彼女にキスするために。。。
ただ、最近彼女が「いくらスピリットだからって、『待っていて』なんて勝手だよね!彼は死んじゃってるからあれだけど、私は生きてるんだよ。いつまで待てと??他の彼氏を作るなって事?」などと言い出した。。確かに。。
生きてる女の方が怖いかも!?
MAYU
|