●更新日 10/08●


ヌリカベ伝説を探せ!


そんな折り、「カベヌリ」との衝撃的な出会いが私に訪れたのである。
数年前、化け猫の調査の課程で、知人から大分に妖怪で町の振興を行っている「臼杵ミワリークラブ」というグループがいるとの情報を得た。

連絡先を入手した私は会長のW氏にお会いし、その際に妖怪談になったのだが、なんとW氏の口から「カベヌリ」の話が出たのである。

私は我が耳を疑った。
大分県臼杵市には「カベヌリ」の伝承が残っていたのだ。
W氏をはじめメンバーで老人への聞き取り調査、また地元の文献の調査も行っており、聞き取り調査でも、文献でも「カベヌリ」が出てくるというのだ。
地元では有名すぎる妖怪であったのだ。
しかも「カベヌリ」の絵はがきも観光土産として発売しているというのだ。
つまり、あまりにも地元では有名であるが故、丸山学の調査以来、確認されてない妖怪という観念は彼らには無く、私の指摘によって初めて気づいたのである。
これで「カベヌリ」が伝承されている場所は発見された。

ひょっとしたら、「ヌリカベ」もいるのでは?
私は後日、臼杵ミワリークラブのS氏に「カベヌリ」の絵はがきの購入と「ヌリカベ」の調査を依頼した。

そして送られてきた「カベヌリ」の絵を見て驚かされたのである。
まさに「ヌリカベ」そのものである。
聞き取り調査のイメージをそのまま再現したそうであるが、まさに「ヌリカベ」そのもののビジュアルであったのだ。

さらにショッキングな調査結果がS氏より送られてきた。
なんと「ヌリカベ」の伝承も大分県内の至るところに残されていたのである。

また臼杵市内では「カベヌリ」と「ヌリカベ」の両種が混在していたのだ。
残念ながら、柳田国男が伝承を見つけた福岡県遠賀では今だに発見には至ってないが、大分において伝承の存在を確認できたのである。


補足するのであれば、「カベヌリ」「ヌリカベ」の名前は異種の妖怪を指すものではなく、「傘化け」と「化け傘」のように、単語を構成する言葉の上下が入れ替わっただけではないだろうか。

2000年4月27日、伝承地が幻であった妖怪「カベヌリ」「ヌリカベ」は、私と臼杵ミワリークラブの共同作業により再発見されたのである。


山口敏太郎



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