●更新日 02/11●
山口敏太郎は、山猫がお好き
筆者は山猫に並々ならぬ興味がある。日本各地の山には、化け猫や山猫伝説が多く、猫魔岳・猫岳と呼ばれる地名も多数存在する。あの宮沢賢治の児童文学「注文の多いレストラン」も、魔物化した山猫が人間を食べるといった内容である。現実には、本州には山猫がいないとされる我が国だが、大陸と陸続きだった時代には山猫が生息したと推測されている。かつては、山中にいたはずの山猫の記憶の残像が、我々の脳裏で熟成し数多くの化け猫伝承を生み出したのであろうか。
なお、現在我が国の本州には、山猫が生息していないのだが、対馬と西表島にはそれぞれツシマヤマネコとイリオモテヤマネコが生息している。双方、現存する個体数が少なく絶滅が心配されているが、ツシマヤマネコは各地の動物園が繁殖プロジェクトを実行しており、福岡市動物園で12頭、井の頭自然文化園で4頭、よこはま動物園で4頭、富山市ファミリーパークで3頭、対馬野生生物保護センターで11頭、あわせて34頭が飼育されている。この取り組みにより、順調に個体数が増加している。
一方で、日本国内の猫系UMAも若干だが、存在する。かつて、三宅島では山中で人間を襲うヤマネコが度々目撃されたが、家猫が野生化したものであった。また、西表島にはイリオモテヤマネコとは違う大型のヤマネコの目撃談がある。大きさはイリオモテヤマネコの1.5倍以上あると言われ、単純な大型個体ではなく別種のヤマネコではないかと言われているのだ。
このヤマネコは、ヤマピカリャー(山の中で、光るもの)という名前で呼ばれており豹のように木上で生活しているという。一説によると、山奥に繁殖コロニーがあり、そこで数十頭が暮らしているという話もある。戦前には、ごく普通に目撃されており、その肉を食した人物もいるとされている。食べた後、毛皮を埋めた場所は、水害に流されてしまい毛皮は失われてしまった。
動物学に詳しい人間の中には、「同一地域で近い種の生物が二種類以上生息することはない」と主張するものもいるが、イリオモテヤマネコは主に地表で暮らし、ヤマピカリャーは木の上で生活しており、行動範囲が被らない。ゆえに狭い西表島でも二種類のヤマネコが生息することも可能である。
実は、最近もこのヤマピカリャーの目撃情報が報告されている。2007年9月14日の午後6時過ぎ、島根大学の秋吉英雄教授が、西表島にて豹のような大型の猫科の生物を目撃したというのだ。秋吉教授は魚類が専門だが、生物学の素養もある専門家であり、通常のイリオモテヤマネコを誤認する可能性は低い。今も、西表島の山中には、ヤマピカリャーが息を潜めて生息しているのであろうか。
なお、謎のヤマネコは、インドネシアでも目撃されている。インドネシア政府は、2005年7月にカリマンタン(ボルネオ)島の熱帯雨林でのアブラヤシ大規模栽培計画を発表した。これに対し、WWF(世界自然保護基金)は、現地の野生動物の生態調査の為、監視カメラにて現地の様子を撮影した。実はそのカメラの映像に謎の肉食獣の姿がとらえられていたのだ。2005年12月6日のWWFの発表によると、この未知の肉食獣は同島中部のカヤン・メンタラン国立公園で、2003年の夜間に2度、その姿が撮影されたのだ。
WWFの研究者によると、猫ほどの大きさで肉食であり、体色は濃い赤、小さい耳と、ふさふさとした長い尾を持ち、後足がたいそう発達しているらしい。この動物が完全に新しい種であるか、猫やキツネ、テン、オオジャコウネコなどの亜種や突然変異の個体であるかは、はっきりとしない。だが、この2枚の写真撮影以降に姿を見ていないということは、非常に少ない個体数だということであり、ひょっとすると一瞬その姿を現しただけで、その直後この地上から絶滅した可能性すらある。今後の調査が待たれるヤマネコ情報である。
ヤマピカリャーとインドネシアの山猫よ、どうかジャングルの奥地で生き残っておいておくれ、いつか会える日を楽しみに待っているから。
山口敏太郎
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