去る

 私は、今までの経過を電話で太田さんに伝えた。
 すると彼女は、突然ワァワァと泣き出した。
 わけを聞くと「美幸さんは私と同じ境遇だったんですね」という。 彼氏に他の女がいるというのだ。
 しかも、彼に問い詰めると、二度と自分の元に戻って来ない気がして何も出来ない。つらくて仕方がないと・・・・・。
 美幸の霊が、同じ境遇に苦しんでいる太田さんの心と共鳴し、今回の一件を 引き起こしたのではないだろうか。あの車を選んだのも、たまたまではなく、霊が
太田さんの彼氏を呼び寄せ買わせたのかも知れない。  

 罰を与えるために・・・・・。

 今も車は、納屋の闇の中で眠っている。だが、美幸の両親が出張から戻れば、
またどこかの中古車センタ−に売るかも知れない・・・・・。それを買うのは誰だろうか。

注:霊の怨念を少しでも晴らすために、実名で書きたかったのですが、
  出版の都合上、仮名にしました。