問題の車は、家のはずれにある納屋の中にあった。
 美幸の両親が広島に長期出張する前に売ったのだが、例の一件で中古車センタ−から突っ返されたのだ。
 車を供養するので売ってほしいと頼んだところ、おばあさんは、「中古車センタ−の所長が、車に美幸がいるといってたから、このままいさせてやりたい」と言う。
 やはり所長は車の因縁を知っていたのだ。

 部屋に戻ると、おばあさんは美幸の子供のころのアルバムを見せてくれた。「反抗期もなく、本当にいい子だったのに・・・・・・。」と涙ぐむ。
 そして「あんな男に引っかかってしまって・・・・・。美幸が死んだとき、家族全員で旦那(剛)を恨んだ」と言った。
 美幸と一緒に写っている女の子について尋ねると、「この子は美幸の妹だよ。今は、赤い屋根の病院に入院している。可哀想な子だよ・・・・」と。
 この地方で赤い屋根の病院とは、精神病院のことだ。
 美幸が死んだとき、純粋無垢な妹は凄まじいショックを受けた。というのも、美幸からこんな話を聞かされていたからだ。
「結婚してからずっと、剛は私の貯金通帳からお金を引き出しているの。一万円、二万円って。それでも愛しているから、我慢していた。昨日ね、ジュエリ−の店から、指輪のサイズの確認の電話があったの。うれしかったわ!剛が私の為にこっそり買いに行ったと思って・・・・・。ありがとうって言おうとして、彼の会社に電話したの。そうしたら「おまえに買ってやる訳ね−だろ」って言われたのよ・・・・・。それで私、はじめて反抗したの。「お金を勝手に引き出しても、黙って我慢してあげたのに」って。すると、ブツッと切れちゃった。もう、剛は帰ってこないかもしれない・・・・・。なんだか怖い・・・・」

 美幸がおとなしいことをいいことに、身勝手な態度をとり続ける剛。挙げ句には、美幸を自殺に追いこんだ。それを知っていた妹は、直接、剛が姉を殺したとおもったのだろう。恨みは募り、とうとう精神に異常をきたしてしまった。
 その後、剛の実家に恨みの電話をかけ続け、警察沙汰にもなっている。
 現在、彼女が精神病院に入院して四年がたつ。彼女はまだ若い。この先も同じ状態が続くとすれば、あまりにも不憫だ。残酷すぎる・・・・。