隣にある5号館にいた学生の証言によると・・・・。
 当日、ナナハチ(7,8限目のことで、2時50分〜4時20分)の講義を受けていると、
外から人を呼ぶ声や悲鳴が聞こえる。
 学生たちは講義もそっちのけで階段を駆け降りいっせいに現場に向かった。
人込みをかきわけて見上げると、窓に向かっている死体からはおびただしい量の排泄物
が垂れていた・・・・。

 自殺したのは、堀口良幸君(仮名)。
 救急車や梯子車が到着したが、現場がテニスコート側だったために梯子車は使えず、
死体が自分で割った研究室の窓から中に入れるしかなかった。
担架に乗せられた死体にはシーツが被せられ、正面玄関から救急車に乗せられた。

 自殺の動機について、複数の学生から聞き込んでみると・・・・。
 堀口君は大企業の内定が決まっていて、そのことを喜び、得意げに友人に話していた。
しかし9月の下旬、前期の成績発表で、ある科目の試験結果が思わしくなかった。
それは、自殺の現場となった研究室の教授の科目である。
 たいていの学生は、教授のところへお願いにいったり、課題をこなすことによって
履修できるものだが、プライドが高く成績不振など経験したことのなかった彼は、
教授に対し、「不況の影響で一流会社の内定を取るためには、人並み以上の
就職活動が必要で、とても勉強する暇がなかった」と主張。話し合いは口論に発展し、
教授にますます嫌われてしまったという。
 堀口君は、自分だけが教授に差別されていると思い込むようになった。
留年になってしまうと、就職もできず、自分の人生計画が大きく狂ってしまう。
内定取消になることにひどく怯えた彼は、ノイローゼが頂点に達し教授を逆恨みして
壮絶な死を遂げてしまう。