事件はそこまでだが、私は一つ、気になる情報を得た。死ぬ直前、彼は友人に
「教授にあやまろうと思って、何度も研究室に行こうとしたんだが、いつも同じ女が
俺を追い抜いて先にはいり、鍵をしめる」ともらしていたというものだ。

本当にそんな女が存在したのか?直接、当の教授に当たって聞き込むことにした。
(以下、電話での会話)
「ああ、堀口君か。彼は私が女子だけに甘い、と吹聴していたが、そんなことは断じて
ない。先に女子学生がはいって鍵をかける?馬鹿なことを!たくさんの学生が
出入りするんだよ。みんなに聞いてみればわかることだ」
「彼があやまりに来たことはありませんか?」
「入口で物音がしたので、気になって開けてみると、彼が肩を落として帰っていくのを
見たことがあるが・・・」
「その研究室に何かいわくがあるとか、そんな話を聞いたことは?」
「そんなものはない。もういいかね。切らせてもらうよ!」
 こちらの失礼な質問攻めに、よほど立腹したらしい。教授には亡霊が見えて
いないのだから、怒るのも無理はなかった。
 しかし、真実はただ一つ。堀口君は教授に謝罪するのを、なぜか亡霊に邪魔をされ、
死に至っているのだ。彼の霊魂を見る能力が災いしてしまったのか・・・