気が付くと、朝でした。 それが夢でないことは、手首のあざが証明していました。 私は身だしなみもそこそこに、不動産屋へかけこみ、あの部屋の解約を申し込みました。 昨夜の件を問いただしても、なかなか不動産屋は口を割りませんでしたが、あまりに食い下がるのでしぶしぶといった態度で喋り始めました。 十数年前、あの部屋には、一組の夫婦が住んでいたそうです。 病弱な妻を家に置いて、夫はよく外で浮気を繰り返していました。 最初は黙認していた妻ですが、夫があまり家に帰ってこないようになると、さすがに我慢できずに夫に訴えました。 逆上した夫は(その日泥酔していたこともあり)……その後、私の見たような光景が実際に起こったというわけです。 いまでも「彼女」はあの部屋で、夫への恨み言を呟いているのでしょうか。 あの日つけられた手首のあざは、3年経った今でも薄れる気配はありません。 |
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