「ひどい」

すすり泣くように女が囁いたとたん、女の姿は闇に溶けるように消えて行きました。
とたんに力が抜け、どっと汗が噴き出してきました。
完全に酔いが引いてしまったので、顔でも洗おうと身体を起こしかけた瞬間のことです。
腹部に重さがかかり、ベッドに押さえつけられました。
血まみれの顔をした男が私の上に馬乗りになり――包丁をふりあげているのです。