「バリ山行」という言葉を目にした時、読者の多くがまず思い浮かべるのは、インドネシアの「バリ島」かもしれません。ところが、今回話題となっている「バリ山行」は、バリエーション登山のことでした。しかも、芥川賞を受賞したこの小説が、その登山のスタイルをテーマにしていると聞いて、誰もが「なんで登山が芥川賞に?」と驚いたのではないでしょうか。
実際に私も同じような疑問を抱き、読んでみた結果、この作品が意外にも身近なテーマを扱っていることに気づかされたのです。登山経験のない人間にとって「バリ山行」はなじみの薄い言葉ですが、知り合いの登山者に聞いてみるとポピュラーな言葉のようです。
バリとは「バリエーション」の略であり、要するに「普通のルートを外れる冒険的な登山」を意味しています。街中の生活を一時的に離れ、大自然の厳しさと向き合うという意味では、これ以上にリアルな体験はないのかもしれません。
小説の中でも、この「バリ山行」を行うベテラン登山者・妻鹿(メガ)というキャラクターが登場します。そして、彼に対して、主人公の波多が投げかけた一言がAmazonの紹介文に掲載され、私の心を揺さぶりました。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか!本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ!生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」
正直なところ、私はこのセリフに興味を持って、すぐに本をポチってしまいました。
それは、このセリフが、これまで私自身が実生活でかつての仕事で、何度か浴びせられた批判にそっくりな構図だったからでもあります。
しかし、本書を読み終えた後、このセリフに対する明確な回答は示されてはいません。
結局、物語の核心は「何がリアルか?」というテーマにたどり着く。そして、その答えを出すのは読者次第なのです。
物語は、社内登山部に参加した主人公・波多が、同僚の妻鹿と共にバリ山行を体験する過程で、仕事と趣味の狭間で揺れる心情が丁寧に描かれています。
興味深いのは、登山という極限の状況において、「街での生活こそが本物の危機だ」というメッセージが込められている点かもしれません。会社での人間関係や仕事の重圧が、時には命を賭けた登山以上に人を追い詰めることがあるのだと、この小説は示唆しているように感じました。
探偵の世界にも「バリ探偵」というものが存在しているかもしれません。普通のルートを外れ、定番の調査手法に頼らず、独自のスタイルで真実を追い求める探偵たち。彼らは定番のデータベースや監視カメラに頼るだけでなく、直感や経験、そして危険を恐れない行動力で事件の真相を解き明かしているのです。
探偵N
得意分野は、地域密着型の調査とグルメ探訪。地元住民との深いコネクションを活かし、現地でしか手に入らない情報や事件を次々と掘り起こします。