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消費税減税をもう一度考える

 前回、国民民主党の消費税を5%に減税というのはどうか、と問題提起したところ、数名の読者の方からご意見をいただきました。それらを読んで改めて感じたのは、SNS上での減税ブームはすごいですが、実は多くの人は冷静に考えているのではないかということです。

 意見の内容を幾つか紹介しますと、Yさんからは、

・どの党も減税ばかりで歳出改革の主張は不十分

・一過性のお金の使い方は無駄が多いので、蓄電池の開発促進など将来に向けた変化に使った方が良い

というご意見をいただきました。全くご指摘の通りだと思います。米国のある著名なジャーナリストの言葉に「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える」というのがありますが、日本の野党はみんな政治屋、でも与党も別の意味で政治家とは言い難い(官僚の言いなり、政策は前例の延長ばかり)と思います。

 Fさんからは、むしろ消費税を増税すべきではないか、というご意見をいただきました。軽減税率との差にメリハリつけるべき、所得税を払っていない高齢者も平等に税負担すべき、といったご指摘はその通りだと思います。

 かつ、消費税収は社会保障の財源であり、基礎年金は今の制度(社会保険料(未納が40%!)と公的負担で賄う)では持続不可能なことも考えると、将来的には基礎年金を消費税で賄う最低保障年金にシフトすべきで、その段階で最低限の消費税増税は必要と私も思います。消費税負担が多少増えても社会保険料負担が大幅に軽減されれば、働く世代のトータルでの公的負担は減少します。

 そして、Uさんからは、全く別の観点からすごく貴重なご意見をいただきました。要約すると、

・岸の意見はその通りだけど、机上の空論でもあると思う

・経営者としての経験から、若者の思考は「まずやってみる、ダメならやり直す」である。社会にはまだやってないことを先んじて封じる論調が多いが、それを超えた世界、そこに集まる人材に託せる夢もあるはずだ。

というご意見で、私自身本当に反省させられました。

 確かに理屈ではこうと語るのは簡単ですが、机上の理論と現実は違うので、確かに理屈ばかりでは新たな可能性を封じてしまい、社会も進化しません。

 実際、米国でのトランプ支持者は、グローバル化で変容してしまった米国社会(異常な格差、移民で変わってしまった地域社会)の破壊を望んでいますが、破壊した後の新しい社会の姿については明確なイメージを持っていません。社会のダイナミズムが今より良い社会を作ってくれると期待しているのでしょうか。

 日本では学者や役人が理屈で新しい取り組みを潰してしまうことが多いですが、それが日本社会のダイナミズムを低下させてしまったのかもしれません。今必要なのはそうした硬直状態を変えることですから、減税を希望するのは圧倒的に若い世代という現実を踏まえ、減税のみならず、その延長で将来の日本社会の望ましい姿まで、頭を柔軟にして考える必要があると改めて思いました。

 いずれにしても、貴重なご意見をお寄せくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。今後もこうした対話を続けていきたいので、引き続きよろしくお願いします!

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

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