見えていないから恐怖を感じない。見えると怖い。それは私もまったく同感だった。

翌日、さっそく佐田に聞いた。
「佐田さんのとこの実家、どんな家? 先祖はなんだったの?」
「私のところは古い屋敷です。内藤町の武家で、たしか、貧乏旗本だったと祖父から聞いたことがありますが」
私は里見さんの話を自分の“夢の話”にすり替え、井戸の供養を口にした。
「え? 気味が悪いですね、じつは先月埋めてしまったんですよ。物置のプレハブを建てるために。そうですか、じゃあ、しっかりお祓いをしておきます」
里見さんはズバリ言い当てていた。
私は佐田の頭の上を見上げ、ここに生首が二つあるんだな、と想像してしまった。里見さんを睨んでいたのは、霊視能力がある彼女に何かを訴えていたのだろう。

佐田が古井戸を供養してから、会社に生首が出社することがなくなり、里見さんも安心して仕事ができるようになった。