●更新日 06/28●

探偵達の心霊事件簿 〜夏季限定〜
◆八王子城址

序 ―――始まりの時―――

こんばんは、皆さま。探偵ファイルのキムです。あぶない探偵より、怨霊の館へコンテンツを移し、装いも新たにスタートするこの心霊系企画。しかし、初めから大いなる障害が…。編集長曰く「大住だけに任せておくと、どんなに怖いスポットもコメディー場になってしまうんだよな。キム、君も書け」という事で、ただでさえ仕事がキュウキュウで大変なのに、大住とのダブルセットで書く事になりました。これより、幾多の物語を人間失格大住と不幸王キムのコンビがお送り致しますので、どうかご容赦を…。

起 ―――怨念立ち込めて―――

以前より募集していた心霊スポットの中で、東京は八王子に在る『八王子城址』を挙げるメールが何通か編集部に届いた。

八王子城址
小田原に本拠地を持つ北条氏康(うじやす)の次男の氏照(うじてる)が甲斐の武田信玄軍に備えて天正元(1573)年頃に築き上げた城。関東の要衝の一角と名高かったが、 天正18(1590)年6月に豊臣秀吉の軍勢に攻められ、たった一日にて敢え無く陥落・落城。その後、北条氏を7月に降伏させた秀吉は天下統一を成し遂げた。この城址には、怨念を持った武士の魂が残留し、時としてその姿を見せると言う。目撃証言は、枚挙に遑が無い。

その落城した日が折りしも、6月23日!行かねばならぬような気にさせる…。この落城日には最も霊が目撃されていると言う。我々はこの日に取材を敢行する事を決定した。

承 ―――その時は気たれり―――

‘03年6月23日。その日が来た。しかし、天候は雨。屋外での撮影や取材には不向きである事は否めない。それでも、私達は行かねばならなかった。都心より日野、八王子と現場に近付くにつれ、雨脚は強くなる一方であった。まるで私達を拒むかのように…。途中、大住が住所を全然調べてなくて、着くまでかなり難儀したり、ライトの電池チェックを済ませていなかった為に、現場から態々コンビニに買い物に行かねばならなかったりしたが、いつもの事なので割愛する。
現場に到着した。降りしきる雨の中、山の中間に位置する城址が鬱蒼たる森の中で待ち構えていた。





車から降り立つ。その瞬間、激しい腹痛を感じた。身体に今までは異変は無かった。現地に降り立った瞬間に激痛となったのだ。実は事務所にいる時から、今回の任務には、“嫌な予感”を感じていた。私は霊感はほとんど無い。正確に言えば、“もうほとんど残っていない”だろう。自ら言うのは何だが、小学生の時はかなり霊感は強かった。しかし、成長するにしたがって、その能力も薄まっていったのだ。それでも、“嫌な予感”を感じる時はある。今回はそれを感じていた。大住は食い過ぎだろうと言うが、決して違う。刺すような痛みが表現として近い。(因みに、この痛みは現場を離れるまで消える事は無かった…)。暗闇の中、私達2人は城址へと歩みだした。

転 ―――御主殿址―――

入り口から数分歩いた程度で、既に灯りは消え失せた。おまけに土砂降りの森の中。視界は最悪だ。頼りは手にしている懐中電灯のみとなる。橋を渡り、緩やかな斜面を登っていくと水の流れる音が聞こえて来た。なるほど、この先に在るのが「御主殿の滝」なのだろう。その滝を先に進めば、「御主殿址」へと繋がるのだろう。まずは御主殿址を確認する事とし、石垣の間を縫うようにして進んで行った。果たして、御主殿址は私の目の前にその姿を現した。しかし、実際にやって来て感じた事はただの広い野原。特に霊の気配も感じない。





そこで大住は恒例の、“心霊スポットに臭い付け”を始めた。ようは単に放尿しているだけである。だが、この様な場所でその様な行為をするのは甚だ罰当たりであると思える。…以前の私ならこう言って終わり
だった事だろう。しかし、今回は私も甘んじて罰当たりな行動をしよう。その行動とは…



       慰霊碑前でのお経


真夜中の、しかも土砂降りの中、落城したその日に金髪・スーツの男が白い手袋をしてお経(般若心経)を唱える。在り得ないシチュエーションである…。お経を20分ほど唱え続けたが、何の反応も得られなかった。残念であると共に、安心する自分が居た。下に降って来た。ここからが本番である。読者からの話によると、この御主殿址に到るまでの道は幾つかあるが、その中でも1番奥の右側の細い道が最も危険であると言う。早速、最登頂を開始する。すると…在った。細い山道の様になっている道だが、確かに在った。私と大住は、その道へと踏み込んで行った。

結 ―――惑わされた2人―――

細い道を進む。途中、廃墟と化した民家を発見したり、石仏を発見したが割愛する。





問題はこの後、起きた。私達は御主殿へと向かっている筈であった。細いながらもきちんとした道であった。ところが…、気付くと私達は獣道すらない山中に居た。何の違和感も無く歩んで来たのに、はっと気付いた時には山の中だったのである。どこを歩いて来たのかも解らない…。回りは漆黒の闇。正に手にする懐中電灯だけが頼りの状態となってしまったのだ。大住もこの時はいつもの余裕は無くなり、真剣に焦っていた。「道は何処だ!?」歩めば、泥と共に崩れる脆い斜面。降りしきる雨。絶体絶命…と言う言葉が脳裏を過ぎる。遭難だけは真っ平ごめんだった。数十分山の中を彷徨った事だろう。この様な事態になる事を想定していなかった為、普段の格好そのままで来た2人のスーツと革靴は泥に塗れていた。このままでは危険だ。そう感じた時に、“第6感”と言えるものが働いた。何故か私には、進むべき道が解ったのだ。大住の「そっちは違うんちゃいます」の声を無視して進んだ。すると果たして、御主殿の広場へと到達したのだ。全く道が無い所から。私は人心地ついた。読者は、「単に道に迷っただけではないか?」と当然思う事だろう。しかし、断定して言う。その時は完全に人を惑わす力場の様なものが発生していた。
もしかしたら、失礼な2人組に対して罰が当たったのかもしれない。霊と呼べるモノの存在は確認出来なかったが、なんらかの重苦しい空気が満ちていた八王子城址。私は心で、反省しながらその場を後にした。

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