●更新日 07/14●
大霊園で・・・
恐怖をかき消すコツは、「恐くない」と精神集中することだ。
千葉県松戸市にある「八柱霊園」。
街中にある巨大な墓地だ。敷地内の一角である「第13区」には心霊現象が起こるという噂がある。
無縁仏の墓が影響しているというが……。
デジタルカメラと懐中電灯を手に取材を行った。
霧雨の中、左手に延々と鉄柵が続く歩道を進んだ。
閉ざされた霊園の裏門。見通しの悪い大きな園内に、足を踏み入れた。
月明かりか町の明かりか、見上げた梅雨空は気味が悪い。
「恐くない」
同じ言葉を繰り返して歩く。
風が生ぬるい。
案内板で「第13区」を確認。幅が広く舗装された道路が碁盤のように走り、
500メートルほど園内を縦断しなければならない。東西にも1キロ近くある大霊園。
手始めに道中の墓地へ足を踏み入れることにした。
「恐くない・・・」
数え切れないほど並んだ墓石の間にある小路に入った。
不意に、 伸び放題の毛のように生える草むらが足に、顔にはクモの巣が絡みついた。
「恐わっっ・・・」
驚きは恐怖に変わる。鼓動、シャッターの音、足音。
鋭敏になっていく神経。
青白く光る墓石群、荒れ果てた狭い十字路には、土がうなるように盛り上がっている。
「声が聞こえてきたりしないだろうか」
恐怖を求めているかのように耳を澄ませていた。
恐いもの見たさ?
ウウィウウゥェェゥゥウィゥ・・・
音が聞こえる。
放火殺人事件で有名なMモーターがそばにあるが、
工場がこんな時間に・・・まさか、幻聴?
冷たい興奮に凍りついた。
心臓が止まってしまったかのようだ。
「第13区」はまだ遠い。
バカみたいに広い墓地。引き返せない。
デジタルカメラのプレビューを確認。
「・・・」
多くの写真に、白い何かが。
「雨粒でしょ・・・」
ザザッ、と大木が揺れる。
カメラを落としそうになった。
・・・この後「第13区」を通過。
他の区画と特に違ったところは無く、この日、心霊現象は確認できなかった。
しかし尋常ではない雰囲気、
恐怖にまとわりつかれ、記者は引き寄せられるように肩を揺すって歩いた。
深夜おひとりで「八柱霊園」へは、行かれないことをお勧めする。
板倉
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