●更新日 09/10●

歌舞伎町の女霊 (渡邉文男ホラー3)


東京の繁華街で起きたホテトル嬢連続殺人事件。
犯人は未だ捕まっていません。

私は当時、とある調査のため歌舞伎町のマンションで部下と共に張り込んでいました。
二丁目にあるグリーン×××というマンションです。
ふと対象者の住む部屋の上階を見ると、ベランダに白い服を着た女性が立っていました。
部下も気づいたようで
「こんな夜中に何してるんでしょうね・・・?」
私は部下に他所見しないで玄関を見ろ、と命じながらも、視界に入るその女性を時折観察しました。
その女性は身動き一つせず、ずっと立ち続けていました。
時節は11月後半、十分に肌寒い季節。
『おかしいな・・・もう2時間経った・・・』
玄関を見ているはずの部下が、おそるおそる私に問いかけてきました。
「あの女の部屋、電気も消えてますね・・・」
初めは遮光カーテンだろうと思っていました。
しかし、よく目を凝らしてみると、カーテンそのものが無い部屋だと気づいたのです。
おかしい・・・。
さらに一時間が経ちました。女性はまだ立ち続けていました。
数十メートルの距離なのに、顔がぼんやりとしか視認できません。
長い髪の毛は風で時折揺れています。
「おい、オペラ(携帯双眼鏡)くれ。」
六階にあるその部屋に双眼鏡の焦点を合わせようとした、その時。
タイミング良くか悪くか、対象者が玄関から出てきてしまいました。
ベランダに立ち尽くす女性のことが気になりましたが、仕事を放棄するわけにはいきません。
後ろ髪を引かれる思いで、対象者の尾行のため、現場から移動しました。

翌日です。
部下が青白い顔をして私に言ってきました。
「実は、あの女の写真を撮っていたんですけど・・・。」
見せられた写真には、部屋しか写っていませんでした。
後日、気になった私は知り合いの新宿署の刑事に尋ねました。
「60×号室、例の連続殺人のガイシャ(被害者)の部屋だよ。彼氏と一緒に住んでいたんだけど、ガイシャが殺されて彼氏はすぐに引越したみたいだな。」





写真





先月、近くのラブホテルKでサバイバルナイフによって五十数か所をめった刺しにされて殺された女性(22歳)の住んでいた部屋でした。





・・・彼氏の帰りをベランダで待っていたのでしょうか。



渡邉文男


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事