●更新日 11/04●
ヨ・ル・ナ(百物語)
私が学生の頃、連絡といえば今のように携帯電話ではなく主流はポケベルだった頃の話。
当時、福井県のとある全寮制の学校に通う私達の楽しみといえば深夜に外出禁止の寮を抜け出して食べに出る屋台のラーメン。
夏のある日も仲間で寮を抜け出すことが決定し、日が落ちた頃自分のポケベルに一通のメールが。
『ヨルナ』
ポケベルなので相手の名前の通知は無く、表示される文字もカタカナのみの質素なもの。
送り主の名前は無かったが、内容だけでその日の夜に決行だという事が理解できた。
送り主は名前を入れるのを忘れたのだろう…その時はそう思っていた。
深夜1時頃、そっと抜け出し街へ向かおうとするが、その日に限って門の近くに人が。
寮を抜け出したとたんに見つかるわけにもいかないので、肝試しがてら『何年か前に入水自殺した人がいる』と噂の池に寄って町に向かうことに。
池の近くまで来ると、池の方から何かが池の周りの草を掻き分けて進むガサッガサッという音が…。
僕らは全員その場で立ち止まり、音のする方に目を凝らした。
月あかりも無く、闇の中の音に耳を向けていると そのうちザッバーン!!と音から想像するに人ぐらいのものが池に飛び込んだかのような水の音。
僕らは全力で走りその場から逃げた。
興奮したままでその夜は町から帰寮したのを覚えている。
次の日、学校はその話題でもちきりだった。
誰となく言った。
「あの音がなんだったのか確かめに行こうぜっ!?」
放課後数人で池に向かい、昨日の夜僕らが聞いたのと同じ草を掻き分ける音をたてながら池に向かう。
生い茂った草むらが途切れるとそこには水が干上り底の土がヒビ割れた池があった。
「嘘だ…。」
池を見て全員が絶句した時、僕は思い出した。
昨日、自分のポケベルに入ったあのメール…。
カタカナだったからてっきり『(今日の)夜な』だと思ったけど、もしかしたら…。
『(池に)…。』
ma
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