●更新日 11/05●
出社拒否
真面目に働いている人ほど脆いと言います。
秋本学さん(仮名39歳)は真面目に仕事をこなし、浮気など一度もしたことがないという父親の理想のような人物。
近所からの評判も悪くはありませんでした。
そんな秋本さんが「出社拒否」になってしまったのは、一昨年の話。
ある日を境に突然なってしまったようで、家族の方もまったく原因が解らなかったようです。
出社していた時間に起床して会社に行く準備はするのだけど、どうしても足が玄関から先に出ない。奥さんが無理やり外へと出したら、脂汗をかきながら地面に蹲ってしまい、歯をガチガチと振るわせたとか。
何かよくない病気なのではと思い、心療内科に連れて行くも「最近はストレスから出社拒否になってしまうサラリーマンが少なくはないんです」という医師の説明以外に原因と言えるものはなく、奥さんも息子さんも頭を悩ますばかり。
入社してから20年、真面目に働いていた秋本さんを知る会社の方々がどうしたのかとお見舞いに来るものの、その方々とも会えない始末。奥さんが事情を説明すると、上司の方が気を利かせて有給休暇扱いにして頂けたのでした。
会社に行く準備はするけど、どうしても行けない。
そしてお昼過ぎに心療内科にカウンセリングに行くという不思議な生活パターンを2週間ほど続けたらしいです。
今まで20年余りも真面目な生活を続けていた秋本さんの苦悩は如何ほどのものだったでしょうか。
また、突然の出社拒否になった原因は何だったのか。
解らないまま3週間目となったある日のこと。
「決めた。行ってくる」
朝の3週間前まではいつもの出社時間だった、朝7時半。
スーツに着替えた秋本さんは出社拒否になってからこの日初めて、いつもの出社時間に玄関から先に足を踏み出したのだ。
突然の変りように奥さんも多少戸惑うものの、止めてまた症状が再発しては・・・と思ったのでしょう。
「行ってらっしゃい」と声を掛け、玄関から送り出しました。
「あ、見送らないと」
奥さんもサンダルに足を突っかけ、秋本さんの姿を見送る為に外に出ました。
秋本さん宅はマンションの6階。エレベーターで降りるのに1分も掛からないはずです。
しかし、この日は5分経っても10分経っても秋本さんは下に姿を見せない。
「おかしいわね。下まで降りたものの、そこから足が動かなくなったのかしら・・・?」
訝しみながら溜め息を付いたその瞬間!
奥さんの目の前を秋本さんが落下!
秋本さんは飛び降り自殺をしたのです。一瞬の出来事に何が起きたのか解らないまま視線だけを下に向けて見ると、そこには秋本さんがマンションの駐車場に横たわっていたのでした・・・
「行ってくる」とは、死に逝くという意味だったのでしょう。
しかし、出社拒否から自殺に至った原因は一体何だったのでしょうか。
弔問に来た上司の方は、秋本さんが出社拒否になる2日前に仕事で秋本さんが軽い失敗をしたのだけど、それは挽回出来る範囲のもので気に病むほどのものではないはずだけど・・・と話したとか。
真実は秋本さんが死んでしまった今、全く解りません。
ですが少なくても、秋本さんにとっては20年以上働いた会社に行けなくなり、家族を捨てて死を選ぶほど重要な出来事だった。
あなたの周りにも、バリバリ働いてたのに急に肩を落としてる人はいませんか・・・?
西垣 葵
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