●更新日 11/06●
持ち去られたカルテ(百物語)
従兄弟の友人に、余り素行の良くない女の子がいました。
その日も仲間と遊び歩いた後、肝試しをしようということになり、近くの心霊スポット――潰れた病院に花火や酒を持ち込んで好き勝手に騒ぎ立てていました。
すると
「ん?何だろこれ?」
花火を向けた先に、一枚のカルテが落ちており、彼女はその古びたカルテをふざけて持ち帰りました。
カルテには名前以外何も書かれておらず、明け方家に帰った彼女は机の上にそれを置いて、そのまま学校へと向かいました。
その昼、
電話が鳴り響き、Mさんの母親が受話器を取りました。
「はい、もしもし」
受話器の向こうからは、中年の女性の声が聞こえてきました。
「……こちらはS病院のナースステーションですが……」
女性の声はしゃがれており、非常に聴き取りずらいものでした。
「……おたくのMさんが、昨晩うちの病院からカルテを持ち帰ってしまったので。。今晩までに一人で持って来てください」
母親は多少の引っ掛かりを感じたものの、娘の素行に少なからず頭を悩ませていたので、謝罪と共に受話器を置きました。
学校から帰ってきた娘に問い掛けると、彼女は顔を青くして友人に電話をかけはじめました。
勿論友人達も彼女がカルテを持ち帰ったことなど知らないし、誰かに言う筈もありませんでした。結局Mさんはその後カルテを廃棄しまったようです。
それからの彼女のことは分かりません。
ただ、今その病院の回りは警察犬の訓練場として使われており、一般人が入る事は出来ません。
今でも深夜に肝試しに入る人達はあとを絶たないそうです。
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