●更新日 11/17●

7時32分(百物語)


私が高校を出てすぐの頃に起こった出来事です。
私の叔母は何年も入院していたのですが、ある晩叔母が危篤との知らせを受けました。

実は叔母の危篤で親族が呼ばれるのははこれで3回目でしたので、私自身としてはまたかという気持ちと、
心のどこかで「今回も大丈夫だろう」という思いがあったのでしょう。
結局私が叔母の入院する病院を訪れたのは朝方でした。

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仕事の都合上こんな時間になってしまったのですが、一目見て叔母が今回は助からないという事はすぐに理解しました。
そこには眼球の水分が抜けてブヨブヨになった目で私を見ている叔母の姿がありました。
そんな叔母を見ても不思議と違和感がなかったのは今でも私の記憶に残っています。

これはしばらく身動きができなくなるなと思い、ふと当時付き合っていた彼女の家に財布を忘れてきた事を思い出します。
彼女の家は車で一時間半ほど離れており、一睡もしていない私には少々厳しい距離ですが、今を逃すと葬儀が始まり、身動きが取れなくなると考えたので、母の反対を押し切り私は車で彼女の家に向かいました。

車で彼女の家に向かう私は通常の国道ではなく、裏道である山道を走る事にしました。

この読みは見事に当り、朝方だったせいもあり他の車も無く、道中は順調でした。
道中、叔母との思い出を振り返りながらの運転でしたが、次第に意識が朦朧としてきます。
夢なのかそうでないのかはわかりませんが、叔母が激しい怒りを浮かべた顔で私に叫んでいます。
「こっちへくるな!」と・・・

私はビックリして前を見ると目の前は崖でした。あわててブレーキと同時にハンドルを切ります。
事故は起さずにすみましたが、危ないところでした。時計に目をやると7時32分を示していました。

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それから彼女の家には無事に着き、財布を取ると母から電話が入りました。
先ほど叔母が亡くなったと…


亡くなった時間は7時32分でした。叔母が命を救ってくれたのかもしれません。



エイジ



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