●更新日 11/28●
見てくれている?(百物語)
これが怪談になるのかどうかは知りませんが、僕の経験したことを話します。
少し前に大幅にリフォームするため、両親と妹は別のところに住み、僕は管理と犬の世話をするため改装中の実家に一人で半年ほど住んでいました。
そのため、夜になると一人さびしくすごしていました。
そんなある日、ふと座敷にある仏壇に目が行きました。両親が居ないのと僕がものぐさだったので月に一回、お坊さんがくるとき以外は扉を閉めていたのですが、妙に目につき、久々に扉を開け、中を掃除し、蝋燭と線香、水などをあげ、久々に手を合わせました。
今思うとこれが原因だったのかも知れませんね。
その夜ですが、妙に寝苦しく、もともと寝つきが悪いのもあっていつまでたっても寝ることができませんでした。
何度めかの寝返りのあと、どこからか「ミシ、ミシ」と音が聞こえ始めました。
(地震か・・・?)最初はそう思いましたが、どうにも違う。
あえて言うなら足音みたいな・・・?
その音は僕の部屋の扉の外でとまりました。そして、音も無く扉が少しだけ開きました。
そこから覗いていたのは、十年以上前に亡くなった祖父でした。
しばらくの間、祖父はじっと私の方を見ていましたが、しばらくするとまた「ミシ、ミシ」と音を立てながら去っていきました。
次の朝、家族にこの話をすると思いきり笑われました。
しばらくして、月のお参りの日にお経を読み終わったお坊さんにこの事を話すと、
「それは、きっとお前さんが仏壇を開けたとき一人で住んでるのをみて驚いたんだろう。家の中を歩いてお前さんや家族を探したんだろうな。ちゃんと見守ってくれとる証拠よ。よかったな。」
その言葉に私は安心したのを覚えていますが、ただひとつだけ気になることがあります。
それは、僕の部屋を覗いた祖父の顔が鬼に見えたことです。
極楽無頼
選考:百物語制作委員長 渡邉文男 (賞金50万円 詳しい応募方法はコチラ)
|