●更新日 01/15●

掴んでくる手


怪奇ライターなんてやっていると、いわく付きの物件の話を聞くことも多い。
これは私が聞いた中でも屈指の不気味さが漂う話です。

K県に、古ぼけた一軒屋がありました。数年前に持ち主が死んでしまった時、相続した息子が自分は住まないけど、土地も家もあるのだから貸屋にしたらどうだろうか、とそのまま懇意にしている不動産屋に預けました。
そっくりそのまま家具も付いてる状態で住めるわけだから、多少古くても借り手は多かったそうです。


しかし、借り手が決まっても長いこと契約してくれない。
最長2カ月。最短1日。
決まって、「あの家はヤバイ!」「幽霊物件だ!」と言われて解約される。
そんな噂が噂を呼べば借り手はどんどん付かなくなるわけで・・・貸し手となっている息子さんは困りました。


「自分が暫く住んでこの家に何もないことを証明してみせる!それをこの家は安全だからということにして、もう一度、貸家の流通に載せてくれ」


そう不動産屋を説得し、自分が住んだそうですが―――


これは、その息子さんが不動産屋の人に語った話。

それは、真夜中の午前3時。寝ていた息子さんの手を誰かが引っ張って来たそうです。
もちろん誰もいない。夢で引っ張っられているのか、現実で引っ張られているのか。
払いのけながら眼を覚ますと、右腕にはべったりと付いた手の跡が・・・
自分の手で腕を掴んだのではないだろうかと思うも、右腕に付いていたのは、右手の跡・・・。


気持ち悪くなった息子さんは取り壊しを決意しました。


その取り壊し工事の際、縁の下から右腕の白骨が出て来たそうです。


もう騒然とし、他の部分は!?と、警察が調べたそうですが見つからなかったそう。
一体、誰の腕だったのか。そして、何で掴んで来たのか??


真相は誰にも解らないまま、今も中途半端に取り壊された家屋だけが残っています―――



西垣 葵 写真


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