恐怖の予知夢
夢で自分の未来が見えてしまう「予知夢」の能力を持っている人が世の中には存在するようです。今回ご紹介するHさんも、その一人。
Hさんは若い頃から、出かけ先で不思議な経験をすることが多かったといいます。初めて訪れた場所のはずなのに、なぜかその場所を知っている。いわゆる「既視感」です。街を歩いていて、ふと気づくのです、「あぁ、これは夢の中に出てきた街なんだ」と。
この道をまっすぐ歩いていくと大きなスーパーマーケットがある、この先の角を曲がると川が流れている。そういうことが全て的中してしまいます。なぜなら、夢の中で歩いたことのある場所と、自分が現在歩いている場所はほとんど同じなのだから。
そんなHさんが、ある時、本当に恐ろしい夢を見ました。Hさんは昔からの持病で病院に通っているのですが、その病院への近道に、昼間でも人通りの少ない道路があります。いつもその道を通って通院していたのですが、夕方にそこを一人で歩く自分の姿が夢に出てきたのです。
Hさんが道を歩いていると遠くから、誰かの足音が聞こえてきました。その音は次第に大きくなってきます。気になって振り返ると、コート姿の背の高い男が。
身の危険を予感し、足を速めるHさん。ところが後ろから近づいてくる足音も速まり、Hさんは恐怖で顔が引きつりました。そして次の瞬間。男がHさんに追いついたその時、背後から手が伸びました。
気配を感じて男の手をよけ、咄嗟に走り出したHさんでしたが、今度は茂みから大男が出てきて前に立ちふさがりました。すると、その男はナイフで突然Hさんに切りつけてきました。出血し悲鳴を上げるHさん。しかし近くには誰もいる様子がありません。
抵抗しようとしても二人の男に押さえつけられて身動きさえ取れない。そして、Hさんは二人の男に引きずられて茂みの中へと消えていく・・・そこで目を覚ましました。
Hさんはこの夢を見て以来、病院へ行く時はその近道を絶対に通らないと誓いました。なぜなら、もしそこを通るなら自分は確実に殺されてしまうに違いないから。
それから2年ほど経過して、病院周辺の道路拡張工事に伴い、その道はすっかり姿を変えて広く明るくなり、人通りも多くなりました。これで安心と思ったHさんですが、未だにその道を通ることは怖くてできないそうです。
西垣 葵
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