●更新日 10/16●
「ヌリカベ」現象の謎を解け! オカルト研究のススメ
誰でも興味を持ったものはとことん知りたくなるものだろう。
特に筆者は凝り性のタチなので、1度気になったらとことん調べないと気がすまない性格だ。
そんな性格は収集癖にもつながり、1度面白いと思ったグッズはコンプリートするまで買い続ける。
おかげで自宅はそんなグッズやフィギアで大変なことになっているが・・・・・・。
それはともかく、これまで長い間オカルトを研究してこれたのもこの凝り性、よくいえば探究心のおかげだと思っている。
それは学校の勉強のみならず、仕事や趣味を楽しむのにも大いに役に立つ。
その例として、筆者が以前調査したケースを紹介したい。
テーマは、前回取り上げたのでわかりやすいと思い、引き続き「ヌリカベ」にしたいと思う。
以前のレポート「ヌリカベ伝説を探せ!」でわかった通り、無事「ヌリカベ」系妖怪がまだ私たち日本人の心に残っているのが確認された。
ではこの魅力的な妖怪はいかにして成立したのであろうか?
まず筆者はこの「ヌリカベ」「カベヌリ」が大分、特に臼杵市という町から発見された点に注目した。
臼杵は磨崖仏で有名であると同時に、しっくい壁の技術において非常に優れた町である。
さらに、渡来人の多い事も見逃せない。
つまり、臼杵は大陸や半島からの先端技術が入りやすい町であったのだ。
有名なところでは海外ドラマ「ショーグン」のモデルになった三浦按針(ウイリアムアダムス)が上陸したのも臼杵である。
また珍元明という、しっくい壁の技術者も多くの弟子を帯同し、定住しているのだ。
しかも、その子孫もいまだに健在である。
この珍元明の作る壁は、当時では異色であった油漆喰という先端技術であった。
なんとこの壁、雨や水をはじく撥水加工が施されていたのである。
この壁が水をはじく様を見た当時の人の驚きはいか程であったろうか?
この先端技術への畏怖が実際に夜出会った怪現象と結びつき「カベヌリ」「ヌリカベ」という個性的ビジュアルを持った妖怪の創造に発展した可能性は十分考えられる。
しっくい壁の町であるが故、いきどまりの怪を「カベ」というビジュアルで表現したのであろう。
同じように、夜道を歩く人々の通行を妨げた妖怪は各地にいる。
「フスマ」「布団かぶせ」「蚊帳つり狸」「あしまがり」「すねこすり」などがそうである。
どの妖怪も、違ったビジュアルを有している。
これはあくまで個人的類推ではあるが、「襖」、「布団」「蚊帳」、どれも男の夜遊びを連想させるビジュアルである。
これらは性的夜遊びを、妖怪を持って表現したものである。
この事からも、壁の先端技術の町が、通行を妨げる妖怪のビジュアルや、名前に「かべ」を使用しても不思議ではない。
では、かつて大分県の人々の間で、交通を妨げる怪現象が起っていたのであろうか?
沢山の伝承がある以上、なんらかの現象がおきていたのであろう。
そして、江戸時代から戦前ぐらいまでは、体験談として語られていた。
その現象とは一体何であろうか?
筆者は、ビタミンの欠乏が原因かと推測している。
江戸の中期に、それまで食べていた玄米をやめて、庶民は白米を食べるようになった。
つまり精米によってビタミンが豊富な部分が取り除かれるようになったのだ。
当然、当時の人々にビタミンという概念があったとは思えない。
サプリなどもなかったし、ビタミンの不足が発生したのは必然だっただろう。
こうして、ビタミンAの不足は夜盲症を引き起こし、ビタミンB1の不足はかっけを引き起こしたのである。
ちなみに江戸時代に、土用の丑の日にうなぎを食うようになったのは、暑い夏場にもウナギが売れる方法を相談された、平賀源内が考えた広告戦略だが、人々はウナギに豊富なビタミンが含まれている事を本能的に気づいていたのかもしれない。
この2つの症状は「カベヌリ」「ヌリカベ」の現象に似てないだろうか?
「かっけ」で不自由な足の運びは、交通の妨げに感じただろうし、「夜盲症」で周りが見えなくなる現象は、まるで巨大な壁につきあたったかのごとく感じたかもしれない。
何故だか、理由がわからない人々の恐怖は凄まじいものではなかったのではないだろうか。
近代栄養学の概念のなかった当時、おびえた人々は、狐狸のいたづらか、何らかの妖怪の仕業かと思った事だろう。
つまり、食の変化によって生じた身体状態を怪現象としてとらえ、そのビジュアルに当時のハイテクの象徴である「しっくい壁」を与え、妖怪「カベヌリ」「ヌリカベ」を誕生させたのかもしれない。
当時の栄養状態から生まれた妖怪「カベヌリ」「ヌリカベ」。
これはあくまで、筆者の推理だ。
かつては繁栄したと思われる妖怪「カベヌリ」「ヌリカベ」族も、今は大分で名称が確認されるのみだ。
しかし、今もどこかで未知の「カベヌリ」「ヌリカベ」情報が眠っているかもしれない。
いつかそれに出会う為、筆者は妖怪ハンターの旅を続けてきた。
そして、あくなき好奇心、探究心を持った者が後に続いてくれることを期待する。
読者諸君の、今後の考察における参考となれば幸いである。
山口敏太郎
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