●更新日 01/18●


頭突きで縁結び


これは会社員のOさんが聞いた話である。どちらかと言うと、学校の怪談というよりも、都市伝説と言ったほうがいいのかもしれない。実は、今、学生たちの間で恋が成就するという評判の神社がある。
「しかもね、頭突きすると縁結びになるという神社があるんですよ」
「嘘でしょ、ネタじゃないの?」

筆者は笑いながら切り替えした。
「いやいや、山口さん、まじなんです」

Oさんは、冷静な口調で話を続けた。

その神社の名前は、S神社というのだが、中国地方の山間部にある小さな神社である。山中に鎮座するこの寂れた神社に日本中から、カップルが集まって
―――頭突きをしていく

真夜中に響く石の重い音。聊か不気味ではないか。
「はて、この話、本当だろうか」

不可解な話である。筆者は思わず腕組みをしてしまった。
「やだなぁ、本当なんですよ。山口さん、やり方は簡単なのです」

この境内に、古い石灯籠がある。この灯篭の袋に丸石が入っており、丁度鈴のようになっている。ここがみそなのだ。
―――つまり、この鈴を、頭突きの振動で鳴らせばいいのだ!



昔からこの灯篭にカップルが二人して頭突きをし、もし鈴の音がすると、結ばれるといわれてきたのである。
「おいおい、往年のプロレスラー・大木金太郎の頭突きでも鳴らんぞ!」

筆者が心の中で突っ込むのを知ってか、知らずかOさんの説明は続いていく。
「問題なのは、鳴らない場合なんです。いや、大概、鳴らないんです」

確かにそうだろう。頭突きで石灯篭の中にある丸石が転がって音を出すなど…。ありえない。
「もし鳴ったら、まさに、神業でしょう」

筆者がそう答えた。
「だからね、不思議な話が出来ていったんですよ」

Oさんがそう言った。

だが、その神社で不気味な都市伝説が語られているという。鈴を鳴らしたいがゆえに、何度も何度も頭を打ち付けたあげくに…、死んでいったカップルたちも数知れない。その怨念が、鈴の表面に血の黒い染みとして浮き出してくるというのだ。

まさに、命がけの恋のおまじないなのだ!!


山口敏太郎



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