まず調査は、この二人を連れて中古車センタ−に向かうことからはじまった。相手側に連絡はしていない。
 目的地に着くと、中古車売り場や修理工場を調べた。やはり、例の黒い車はない。売れるにしては早すぎる。
 口外は絶対にしないと約束して、所長にあの車の因縁について聞き出そうとした。
だが、「知らない」の一点張りで、口を割ろうとはしない。因縁のある車と知っていて売ったとあれば、会社の評判にかかわるので言いたくても言えないだろう。
 しつこく食い下がると、「車はまえの持ち主に返した。」と白状した。
 まえの所有者は、陸運局で移転登録の交付を受ければわかる。しかも、まえの持ち主に戻ったということで、ただならぬ因縁があるということも推測された。

 翌日、練馬の陸運局へ行き、まえの所有者を割り出した。ナンバ−さえわかっていれば、
誰にでも調べられる。(中古車を買って霊障を感じた人は、まえの所有者を
自分で調べて見ればいい)
 まえの所有者は高岡剛(仮名)
 茨城県岩井市岩井一×××マンション杉山××。
 現地に行ったが、かなり前に引越ししたあとだった。
 市役所へ行き、転出先を調べると、剛の住民票は実家に移っていた。茨城県水海道。門構えの立派な、大きな家だった。
 そこにも彼はいなかった。
 車のセ−ルスマンを装い、両親から行方を探る。
 すると、二年まえから行方不明になっていることがわかった。問題の車は、剛の奥さんが乗っていたもので、先日、彼女の親から「処分したいので、名義人である剛の印鑑証明をくれ」と頼まれたとのことだった。
 剛の奥さんのことに話が及ぶと、両親は「知らない。これ以上話す必要はない」と家の門を閉ざしてしまった。言葉通り、この家の周囲に黒の小型車は見当たらない。
 私は、剛の奥さんである美幸(仮名)の行方を調べた。
 すると、五年まえ、二十二歳の若さで死亡していることがわかった。やはり因縁のある車だったのだ。
 戸籍には死亡原因が記載されないので、女性調査員を彼女の実家、茨城県谷和原へ向かわせた。