そんなことが続き、さすがに恐くなりましたが、この家賃を考えると手放すまでの決心がつきませんでした。 それに恋人や友人の家に頻繁に泊まりに行くようになり、帰りも出来るだけ遅くし、あまり家にいないように心がけると、そんなこともぱたりと止みました。

いつしか安心しはじめていたこともあったでしょう。
その夜は、足元が不確かになるほど酔っていました。
部屋に文字どおり転がり込むと、メイクも落とさずにベッドに倒れ込みました。
身体が妙に火照って、空に浮いているような気持ちよさを覚えていたのです。
そのまま吸い込まれるように眠りに落ちかけたのですが、小さな音に気を取られ、妙に目が冴えてしまいました。 耳をすますと、小さく、女の悲鳴のようなものが聞こえます。

不審に思い、さらに意識を集中すると、その間にベッドのきしみも入り混じっていました。
ああ、と納得し、心配して損をした、と目覚まし時計をセットしようと枕元に手を伸ばしました。
冷たいものに手首をつかまれたのは、その時です。