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キャベツの高値と政府の無策


キャベツの異常な高値

 キャベツの異常な高値が続いています。年末は一玉1,000円というのが話題になりましたが、今も500円くらいと平年の3倍の高さのままです。物価も所得水準も東京の2倍以上のニューヨークでもキャベツ一玉4ドル(約630円)であるのと比較しても、今の値段は異常です。キャベツほどではないにしても、他の野菜の値段も高くなっていて、多くの家計を圧迫しています。

 それでは、なぜキャベツを筆頭に野菜の値段がこんなに高くなったのでしょうか。天候不順などの季節的要因が強調されることが多いですが、それだけでなく、円安(燃料費、輸送費の高騰)、人手不足、農家の減少などの構造的要因も大きく影響しているはずです。もしかしたら流通段階での便乗値上げもあるのかもしれません。

 としたら、今年も物価は上昇基調を続けるはずだし、去年夏にお米の値段が高騰した時に“秋に新米が出回れば値段も下がる”と言われたのに今も高いままであることも思い起こすと、野菜の高値もまだ続く可能性があるのではないかと思います。

 

ガソリン代は補助するのに食料品価格上昇は放置?

 そう考えると、改めて感じるのは政府の政策の偏りです。ガソリンと電気代・ガス代については価格上昇を抑えるために補助金を出し続ける一方で、野菜などの食料品は割合的にはそれら以上に値段が高騰しているのに、それについては(住民税非課税という低所得世帯への一時金以外は)政府は無策というのはバランスを欠いています。

 もう2年以上にわたり食料品の価格が上昇を続け、累計するとかなり上がったことを考えると、少なくとも食料品に的を絞った物価抑制策を講じることがそろそろ必要ではないでしょうか。

円安是正による輸入物価高騰の抑制、消費税の軽減税率の減税(欧州では軽減税率は消費税率の半分以下)、便乗値上げの抑制、農家への補助の強化など、やれることはたくさんあるはずです。

 

どの政党が物価対策に向けて動くか?

 こう言うと、消費者物価上昇率は最新の数字(昨年11月)で前年同月比2.7%とまだ低い水準であり、せっかくデフレから脱却しつつある中で物価を下げる対策などやるべきでないという反論もあるでしょう。

 しかし、失われた30年の影響で日本の家計は本当に貧しくなっています。働く人の平均年収は約460万円で米国の半分以下、地方だと年収300万円の層が非常に多いのが現実です。この状況でキャベツの異常な高値、更には多くの食料品の価格の高騰を放置するのは、貧乏人は栄養を取るなと言っているに等しいように感じてしまいます。

 よく“賃上げと物価上昇の好循環”という言葉が使われますが、この二つは本来は別物です。かつ、消費者物価上昇率はあくまで経済全体のマクロの数字に過ぎません。いい加減、食料品の物価抑制策を真剣に検討すべき時です。石破政権と野党のどちらが先に動いてくれるのかをしっかりと見守りたいと思います。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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