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BOZZの質問に答えます!【前編】

 前回、野菜の値段高騰を放置する政府に無策について書いたところ、BOZZから質問が二つ来たので、お答えします。

野菜の値段は凄まじく高騰したのに物価上昇率は3%程度?

 まず、「なぜ野菜など生鮮食品の値段がこれだけ高騰しているのに、物価上昇率は3%程度と低いのか」という質問です。

 これは、消費者物価指数の算出に当たっては、食料品のみならずその他の多くの製品・サービスを対象に、合計なんと582もの品目の価格変動を合計・平均しているからです。582の品目のリストは以下から見ることができます。

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 ちなみに、582品目全体に占める生鮮食品のウェイトはわずか4%弱ですので、これではキャベツなどの値段が倍以上になっても消費者物価指数に十分に反映されるはずありません。

 かつ、昨年12月の消費者物価上昇率も3.6%、生鮮食品を除くと3.0%と、生活の皮膚感覚からは低い数字でした。これは、ガソリン代補助などの効果もあるものの、やはり多くの小売業やサービス業で小規模の企業ほど値上げを最小限にして我慢しているからと考えられます。

物価上昇分を差し引いた世帯の実収入も実質消費支出も未だに減少を続ける中で、値上げすると客が離れるという恐怖心から、デフレ感覚を未だに引き摺って無理をして頑張っているのです。

 そう考えると、物価と賃金の好循環が始まっているとして、物価が上がるのは良いことだとしている政府・日銀のスタンスは異常ですし間違っています。これでは消費は盛り上がりませんし、特に日銀が利上げをしたので、価格を上げずに頑張っている小売店や飲食店などの倒産はさらに増えるはずです。

 ちなみに、別の観点から考えても、今の政府の物価上昇への対応はおかしいと言わざるを得ません。石破政権は実質賃金(名目賃金/物価上昇率)の引き上げを目指していますが、実際には今も下落を続けています。ならば、もっと実質賃金の上昇に向け努力すべきなのに、政府の対応は、名目賃金の上昇を経済団体に要請するだけで、物価上昇率の抑制についてはガソリン代などの補助程度しかやっていません。

要は、政府は、物価が上がるのは良いことというスタンスの延長で、物価上昇をほとんど放置しているのです。国民生活を守る立場にある政府の対応として、ちょっとあり得ないと思います。

つづく

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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