以前から追っている「札幌・ススキノ 頭部切断殺人事件」を傍聴をしました。被告人は、札幌ススキノ頭部切断殺人事件の主犯・田村瑠奈の父・修です。
裁判では、父・修が娘の猟奇殺人計画に従い、「のこぎり」「キャリーケース」「カビハイター」などを購入したこと、娘を乗せ殺人現場と自宅の間を送迎したこと、おまけに娘が男性の頭部を損壊する様子をビデオで撮影したこと、などが起訴状によって確認されました。明らかに「殺人ほう助」と「死体損壊ほう助」ですが、父・修は「キャリーケースに首が入っているとは知らなかった」と起訴内容を否認し無罪を主張しました。驚くべきことです。
札幌地方裁判所
裁判中、この人が猟奇殺人を犯した娘を助け、死体をキャリーケースに入れて運んだとは、俄かに信じ難いという印象もありました。父・修は、知的な表情を浮かべ、前を向きときおりうなずくような仕草をしていましたし、姿勢も声のトーンも、疲労していたり、やつれたりしている雰囲気を感じさせません。ダークネイビーのスーツとネクタイ姿で淡々と話している様子。つまりちゃんとしている中年の男性、という印象なのです。 でもこの人は、絶対に娘の猟奇殺人を知っていた、その上で、娘の殺人を「ほう助」したと確信したのは、凶悪犯罪の共犯をするほどの異常な父娘関係です。まさしく歪んだ愛情。
本当に父娘の関係性はとても難しい…。娘の尊重と自立を目的としていれば成長を支え、適切な距離を保ち、娘が自らの価値観や判断力を築くことに力を注ぐはず。ところが健全な関係とは言い難い歪んだ形の愛情もあります。父・修と娘・瑠奈のような共依存関係がまさしくそれ。
被告人・修氏には、長い時間がかかるでしょうが、新たな存在意義と健全な父娘関係を心に宿してもらいたいと願っています。不安、喪失感、虚無感、孤立感、我の崩壊という苦痛に打ち負かされずに。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。